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消えるケーブルテレビ?

米国で進む「コード・カッティング」の実態

米国でケーブルテレビ(CATV)契約を解約する「コード・カッティング(コード切り)」の動きが注目を集めている。民間調査会社が消費者のCATV離れを示すデータを相次ぎ発表する中、CATV側はこうした動向を否定する。米国ではCATVを通じて自宅からインターネットに接続している人が多く、長年、電気やガス、電話などと並び「切るに切れない」支出の1つとみられてきた。安泰だった業界で何が起きているのか。

コード・カッティングは起きているのか、いないのか――。この論争に火をつけたのが、米調査会社SNLケーガンが発表した調査だ。同調査によると、昨年4~6月期にCATVや衛星放送などの有料テレビ契約者が、1980年代の調査開始以来、初めて減少に転じたというのだ。7~9月期も契約者流失が続き、両期合わせて推計33万人がコード切りに踏み切った。

別の調査会社、米ストラテジー・アナリティクスは、2011年に米有料テレビ契約者の13%が解約する可能性があると予測。同社のディレクター、ベン・パイパー氏は「現在、コード切りは消費者の一部の行動にみえるかもしれないが、今後ますます拡大する」と警告した。

こうした「コード・カッティング存在論」への反論を発表したのが、米ウォルト・ディズニー傘下のCATV向けスポーツ専門局ESPNだ。米ニールセンのデータを基に独自算出した数値によると、3カ月間でケーブル切りをしたのは全米総世帯のたった0.11%で「極めてささいな現象」と結論付けた。

だが、実際にCATV企業はテレビ契約者の流出に直面している。米CATV大手タイム・ワーナー・ケーブルのテレビ契約者数は昨年10~12月期に前期比14万1000人減少した。こうしたコード切り現象の「主犯」として名指しされているのが、米DVDレンタル最大手「ネットフリックス」と「不況」だ。

ネットフリックスは、会員がネットで注文したDVDを自宅に届ける郵送レンタル方式で利用者を急拡大させ、店頭型の事業モデルを時代遅れにした米レンタル業界の革命児。会員数は約2000万人。ネットフリックス人気がコード切りを招くといわれる理由は、同社が映画やテレビ番組のネット配信に力を入れ、CATVの代用品として機能し始めているからだ。

昨年11月、DVDを一切貸さない「ネット視聴専用プラン」を発表。利用者は月額7ドル99セントで映画やテレビ番組がいつでも見放題になった。提供するテレビ番組の中心が過去放送分だったり、大型新作映画は対象外だったり、視聴できる番組や映画に制限があるとはいえ、CATV料金の月額50~70ドルより格段に安い。景気の本格回復が遅れるなか、娯楽費を削りたい世帯や所得の減った世帯などが、CATVのコードを切ってネットフリックスに移行する理由がここにある。また、若者を中心にテレビ番組をパソコンでみることに抵抗がない人が増えていることも追い風だ。ネットフリックスの経営戦略を市場も評価。株価は2月11日の終値が231.07ドルと、1年前の約3.7倍に上昇している。

絶好調にみえるネットフリックスだが、今後に不安がないわけではない。配信するコンテンツを所有するメディア大手の間で「反ネットフリックス」的な動きが出ているからだ。

「お試し期間はもう終わり」。米メディア大手タイム・ワーナーのジェフリー・ビューケス最高経営責任者(CEO)は、米紙とのインタビューで、ネットフリックスに比較的安価でコンテンツを提供してきたメディア側の姿勢を見直す必要性を訴えた。「月額8~10ドルで、価値の高いプログラムを買えるわけない」と語り、今後、ネットフリックスに対して人気映画や番組には高額な契約金を要求する可能性を示した。

最近、メディア大手NBCユニバーサル(NBCU)を傘下に収めたばかりの米CATV最大手、コムキャストの動向も注目されている。CATV企業によるメディア企業買収は、まさにコンテンツの囲い込みが目的。監督機関である米連邦通信委員会(FCC)は競合する企業にもコンテンツを供給することを承認条件に加えたが、高額な買収額を支払って手に入れた「宝物」を簡単に放出するとは考えにくい。08~09年にネット配信契約を結んだソニーやディズニーとの契約更新が近づいているとの報道もあり、ネットフリックスにとっては試練の年となりそうだ。

今年が「節目の年」となるのは、CATV業界にとっても同じ。SNLケーガンのシニア・アナリスト、イアン・オルガーソン氏は、景気が回復期に入っても契約者が減少するようであれば、「事態は深刻」とみる。不況による一時的なコード切りではなく、消費者がCATVよりネットフリックスに代表されるネット配信サービスを好む「真正・コード切り」が起きていることが明らかになるからだ。「CATVがなくなるとは思わないが、従来通りの成長産業でいることは難しいかもしれない」(オルガーソン氏)とみている。

(ニューヨーク=清水石珠実)

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