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ヤマハ発、マリン事業が稼ぎ頭 二輪車ノウハウ生かす

ヤマハ発動機の船外機(小型船舶向けの外付けエンジン)やボートなどの「マリン事業」の収益力が急回復している。同事業の2013年12月期の営業利益は過去最高を更新する見込みだ。主力の二輪車事業に比べ、売上高は5分の1程度にもかかわらず、営業利益は2倍近くに上る。主力の米国市場で販売が伸びていることに加え、リーマン・ショック後の生産体制の再編といった構造改革の効果が出ている格好だ。稼ぎ頭のマリン事業の好調の秘密に迫った。

マリン事業を受け持つ木村隆昭専務執行役員は「リーマン・ショック以降、ものすごいコストダウンに取り組んだ」と明かす

「業界初となる累計生産台数1000万台を達成しました」。4月上旬にヤマハ発動機が袋井南工場(静岡県袋井市)で開いた船外機の累計生産台数1000万台突破の記念式典。マリン事業を受け持つ木村隆昭代表取締役専務執行役員は晴れやかな表情で語った。

同社のマリン事業の13年12月期の売上高は前期比17%(337億円)増の2300億円、営業利益は約2.7倍の290億円をそれぞれ見込む。営業利益は過去最高を更新する見込みだ。13年12月期の二輪車事業は売上高1兆円に対し、営業利益は160億円の見込み。マリン事業は二輪車事業と比べ、規模は約5分の1ながら、約2倍の営業利益を稼ぎ出す。

マリン事業の柱が売上高の7割を占める船外機だ。世界シェアで約4割(台数ベース、同社推定)を握り、首位に立つ。次に大きいのが水上オートバイなどのウオータービークル。マリン事業の売上高の2割を占め、こちらも世界シェアは約4割(同)とトップ級。残りの1割をボートや漁船などの船艇が占める。

マリン事業の中でも一品生産の色合いが濃いボートなどに比べ、工場で大量生産する船外機は規模のメリットが働きやすく、利益率が高い。船外機の好不調がマリン事業を左右するといっても過言ではない。

マリン事業の好調な業績には大きく分けて、3つの要因がある。1つが主力市場である米国での伸びだ。米国では景気の回復基調により、船外機の出荷台数は1~6月の累計で前年同期比4%増となった。市場の堅調さに加え、新製品投入効果で船外機のほか、クルージングや釣りなどに使用するプレジャーボートの売れ行きが伸びている。

2つ目が構造改革の成果だ。顧客に富裕層が多いマリン事業は、リーマン・ショックの影響で需要が激減。09年12月期の売上高は1501億円と、その2年前の07年12月期(2899億円)に比べほぼ半減し、243億円の営業赤字に陥った。強い危機感を背景に「リーマン・ショック以降、ものすごいコストダウンに取り組んだ」と木村専務は明かす。

代表例が10年12月期から本格化した国内の生産体制再編だ。それ以前は基本的に、部品加工から最終の組み立てまで、船外機と二輪車は別々の工場が担当していた。だが、「マリンも二輪もおおもとのエンジン技術は同じ」(柳弘之社長)。部品加工は船外機も二輪車用エンジンも同じ工場でできるように、一本化を進める。

具体的にはアルミ部品は5工場から本社工場(静岡県磐田市)など3工場に、鉄部品は6工場から本社工場など2工場に、樹脂部品は3工場から袋井南工場など2工場にそれぞれ集約する。15年12月期までに完了する予定だ。

米国で売れ行きが好調な軽量・200馬力モデルの船外機

調達の効率化も大きい。「生産拠点の海外展開で先行する二輪車部門の調達ノウハウを、マリン部門に応用した」と木村専務は語る。従来、二輪車部門のみの取引だった部品メーカーから、マリン部門に関連する部品も調達することなどを狙い、世界規模で調達先の絞り込みを進める。12年に400社あった基幹部品の調達先を13年12月期は233社にまで削減、17年12月期に200社まで減らす。1社当たりの取引量を増やす一方、さらなるコストダウンを追求する。

一連の構造改革により、船外機生産の損益分岐点をリーマン・ショック前の30万台から15年12月期までに23万台に引き下げることを目指す。13年12月期の生産台数は31万1000台を見込んでおり、損益分岐点を大幅に上回る見通しだ。さらに円安が後押しし、過去最高の営業利益となる見通しだ。

15年12月期にはマリン事業で売上高3000億円、営業利益率15%を目指す。「米国ではマリンレジャー人口の方がゴルフ人口より多いとされる。もっと多くの顧客にマリンレジャーを楽しんでもらいたい」と木村専務は意気込む。新興国に対しても、ロシアやブラジルなどで船外機の販売を強化するほか、中国では大連の合弁会社で漁船の生産を近く始める計画だ。

リーマン・ショックがもたらした冬の時代の努力が実を結びつつあるマリン事業。四輪車や二輪車などに比べると、ニッチな市場かもしれないが、同社の存在感は圧倒的だ。さらに強みを増したマリン事業は、これからも収益を支え続ける可能性が高い。

(浜松支局長 漆間泰志)

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