3Dプリンター、ベテランユーザーの戸惑い
日経ものづくり編集委員 木崎健太郎

(1/2ページ)
2013/3/12 7:00
保存
共有
印刷
その他

クリス・アンダーソン氏が執筆した「メイカーズ」などによって突然脚光を浴びるようになった3D(3次元)プリンター。3Dデータがあれば、その通りの形を樹脂で造形できる。造形サービスを利用すれば、個人が考案した複雑な3D形状の実体を手に入れられることから、アイデア次第でだれでもメーカーになれる可能性が生まれてきた。

大きな可能性を感じる人が増える一方で、古くから3Dプリンターに関わっている人々にとっては違和感があるようだ、という指摘もある。3Dプリンターと呼ばれるようになる前、「Rapid Prototyping装置」や「3D造形機」と呼ばれていた1990年代から先行して利用してきた技術者からは、これまでの苦労をまったく知らない人々が軽薄に騒いでいる、というように見えてしまうのだ。

低価格化と高機能化が進む3Dプリンター。写真は米3D Systemsの「ZPrinter 850」

低価格化と高機能化が進む3Dプリンター。写真は米3D Systemsの「ZPrinter 850」

「これまでの俺の苦労がお前らに分かるか、と面白くない気持ちになるのも分かる」と、3Dコンサルタントでケイズデザインラボ社長の原雄司氏は言う。最近ベテランユーザーはしばしば、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などの意見交換の場で、新たに3Dプリンターを使ってみようとしている人に向かって、つい「そんな造形には向かない」「もっと勉強してから質問しろ」といった言い方をしてしまう。それに対し原氏は、「せっかくの機運を妨げる要因にならないか心配。ぜひ初心者の人たちに優しく教えてほしい」という。

この「世論」と「専門家」のギャップは、言い換えれば3Dプリンターへの期待の大きさと、現時点での実力のギャップだろう。3Dプリンターの精度向上と低価格化が進み、適用範囲が広がりつつあるのは事実である。「メイカーズ」に書かれている「誰でもメーカーになれる」という主張も、単なる夢にとどまらない説得力がある。何より、このような夢を見られるようになったことは、ベテランユーザーが目指してきた3Dプリンターの技術向上のたまものでもある。そのような状況で「3Dプリンターはそんなに簡単なものではない」などと言ってしまうあたり、ベテランユーザーも複雑な気持ちなのだろう。

さらに「メイカーズ」という言葉に、家電製品やスマートフォンのような「最終製品」を企画、製造する立場、というイメージが付随するのもフラストレーションの原因になる。3Dプリンターで造れるのは「部品」であり、「製品」ではない。部品1個がそのまま製品になるようなものや、数個に分割して造形すれば製品全体が得られるようなものならば3Dプリンターだけで造れるが、多くの場合は電子回路や金属部品を3Dプリンター以外で造ったり、購入してきたりして組み合わせないと、製品にはならない。

  • 1
  • 2
  • 次へ

日経電子版が最長2月末まで無料!
初割は1/24締切!無料期間中の解約OK!

保存
共有
印刷
その他

日経産業新聞のお申し込みはこちら

電子版トップ



[PR]