実験から実践へ、電力不足対策の勝機と商機
編集委員 竹田忍

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2011/5/16 7:00
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エネルギー戦略研究所(東京・港)の山家公雄所長は「今年夏の電力需要ピークには間に合わないが、冬ピークに間に合うように発電能力を積み増せるのは風力だけ」と述べ、「補助金なしで20年間、1キロワット時25円で買い取りを保証すれば、3~5年間に風力だけで500万キロワットの発電能力積み増しが可能」と続ける。買い取り価格を引き上げれば国内に風力発電の適地はまだたくさん残っており、環境省の調査結果はそれを裏付けている。東北電力管内だけで3億キロワットの風力発電が可能と同調査は指摘しており、東日本大震災の復興策の1つにもなる。また、太陽光よりも割安というのも風力の魅力だ。

日本風力開発二又発電所(青森県六ケ所村)のNAS電池

日本風力開発二又発電所(青森県六ケ所村)のNAS電池

電力不足対策で即効性があるのがメガバッテリーだ。これまで蓄電池はお天気任せ、風任せで出力が不安定な再生可能エネルギーをいったん蓄えておき、送電網に影響を及ぼさないように電気を安定的に送り出す役割が期待されてきた。これからは別の用途も担う。工場が止まっている休日に余剰となる太陽光・風力発電の電気や深夜電力を蓄えて、平日の昼間に使えば発電所を新設したのと同様の役割を果たせる。日本風力開発は二又風力発電所(青森県六ケ所村)に容量3万4000キロワットのナトリウム硫黄(NAS)電池を併設している。仮にこのNAS電池を風力発電機から切り離して、東北電力が借りれば、一般企業に頼んで休止している自家発電を動かしてもらうのと同じことになる。日本ガイシのNAS電池年産能力は15万キロワット。このキャパシティーを生かさぬ手はない。

川崎重工業が開発した大容量ニッケル水素電池「ギガセル」(電車の座席下に内蔵)

川崎重工業が開発した大容量ニッケル水素電池「ギガセル」(電車の座席下に内蔵)

川崎重工業は超大容量のニッケル水素電池「ギガセル」を実用化している。元々は架線が不要なバッテリー駆動電車を動かすために開発したが、コンパクトで容量が大きい。このため関西電力は太陽光発電所(堺市)にギガセルを設置し、性能評価を進めている。リチウムイオン電池は有機系電解質を使っているため、メガバッテリーのように大容量にすると発熱・発火のリスクが高まる。NAS電池は動作温度がセ氏300度と高い。ニッケル水素電池は電解質が水系で発熱・発火のリスクが小さい利点がある。安全面からもギガセルはメガバッテリーの選択肢に加えるべきだろう。

メガバッテリーはスマートグリッドの中核技術でもある。これまで日本の電力業界はスマートグリッドについて「電力の送電網が老朽化して電気の質も悪い米国のための技術で、安定供給できている日本は急いで導入する必要はない」という姿勢だった。しかし、東日本大震災後の相次ぐ原発停止で、電力が安定供給されているという大前提が大きく揺らいだ。原発の先行きが不透明な以上、エネルギーを安定供給するには再生可能エネルギーやメガバッテリー、スマートグリッドについて日本は世界の先頭を切って、実験段階から実践へ移行しなければならない。このプロセスを通じて蓄積されるノウハウは貴重だ。深刻なエネルギー不足に直面する新興国がのどから手が出るほど欲しい技術でもある。勝機も商機もここにある。

東日本大震災で日本は大きな犠牲を払った。「3.11」後の日本が経済を再び成長軌道に乗せるには、エネルギーに関する技術革新が必須条件となる。

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