英語多読、続ける3原則 辞書使わず、訳さず、一気に
英語は読めるけど会話は苦手――。こんな悩みを持っているビジネスパーソンもいるだろう。だが、そんな人でも英語を日本語のようにスラスラ読めるだろうか。「会話の基本は読書にあり」の発想で、まずはとことん読み込むことで英語力の土台を作ってみてはいかが。専門家の話を基に挫折しない英語多読法のコツを紹介する。
「英語の多読を始めるなら、まずはやさしすぎるくらいの英文をたくさん読むことです」
知らない単語5%以下目安に
理系の難関大学受験生に定評のある学習塾「SEG」を経営し、英語多読に詳しい古川昭夫さんは、多読のポイントをこう説明する。古川さんは2000年から同塾で多読コースを取り入れており、著書に『英語多読法』(小学館)もある。


古川さんが「やさしい英文」を勧めるのは、なるべく辞書を引かないようにするためだ。「会話中に辞書を引くわけにはいかない。多読でこの感覚を養う必要がある」という。
では、どんな教材を選ぶべきか。目安は「知らない単語が全体の5%以下の本」だ。知らない単語が20語に1語以下なら、ほとんどの場合は文脈から意味を推測することができるからだ。
「英語を読む練習というと経済書など専門書を手に取る人が多いが、これは挫折のもと。むしろ児童書などから始める方がいい」と古川さんは指摘する。まずは続けることが一番大事。やさしい本から入れば、自信がつくという。
具体的には「Graded Readers」と呼ぶ英語学習者用のレベル別読み物か、英語圏の子ども向けの「Leveled Readers」がおすすめ。「Graded」ではピアソン・ロングマン社が発行する「ペンギンリーダーズ」シリーズが7レベルに分かれていて使いやすい。ほとんどの本に朗読CDが付いているので、読み終えた後に聞くとリスニングの練習にもなる。
ただ、リスニングや音読は時間がかかり、集中力が続かないことも多いので「苦にならない程度でいい」と古川さんはいう。肝心なのは、訳さず、辞書はなるべく使わず、一気に読むこと。
楽しめないと続かない
さらに、一度読んだ本は再読せず、次々と違う本に挑戦することだ。つまらなければ、途中でやめても良い。気になる本があれば少々背伸びしてもかまわない。英文を読むことを楽しめないと続かないとみる。
辞書も絶対に使ってはいけないというわけではなく、「辞書なしでも楽しめるレベルの本を選ぶ」という考え方だ。「たいていの人は最初は簡単すぎて大丈夫か、という疑問を持つが、やさしい本をたくさん読む人ほど効果が出る」と古川さんは強調する。
とはいえ、徐々に読む本のレベルを上げる必要もある。多読を続けて英語レベルを上げるポイントは「読書量」と「理解度」の2つ。理解度の目安は知らない単語の数に加え、「内容を7~9割は理解できる英文」を選ぶこと。古川さんが多くの生徒に接する中で見いだした経験則という。
まず目指すべきなのは「1千語の壁」だ。完全に理解でき、自分で使える単語が1千語以上の状態を指す。大学受験で言えばセンター試験レベルが近いという。もともと英語に自信のない人の場合、30万~100万語を読めばこのレベルに到達するという。
さらに基本的な英語に不自由を感じなくなるという「基本の2千語を使いこなせるレベル」に到達するには300万語の読破が目安だ。ここまでくれば基本2千語レベルの使い方を大量の英文を通して気づかないうちに身につけているので、会話も飛躍的に上達することが多いという。
英語の多読を続けるもう一つのコツが読書記録をつけること。次々と英語の本を読み終えると達成感を味わえてモチベーションも高まる。記録するのは本のタイトル名、レベル、語数、感想などだ。本のレベルや語数は、古川さんらが運営するSSS英語多読研究会のホームページ(http://www.seg.co.jp/sss/)などが参考になる。読む前に本のレベルの確認のために使うのも良いだろう。
大量の本が必要になる英語多読。図書館を利用するのも手だ。SEGでは約10万冊の蔵書を抱える。社会人でも「ブッククラブ」に登録すれば月額4千円で読み放題。最大28冊まで2週間の貸し出しもできる。(杉本貴司)
[日経産業新聞9月16日付]