大日印、クラウド技術で電子配信拡大 ユニシス株取得発表
大日本印刷は9日、三井物産から日本ユニシス株を取得すると正式発表した。大日本が三井物産に代わって19%弱を保有する筆頭株主となり、ユニシスは大日本の持ち分法適用会社になる。大日本はユニシスとの提携でクラウドを活用したコンテンツ配信事業を強化。既存事業に代わる新たな成長の柱に育成する。
三井物産が保有するユニシス株3052万株(発行済み株式数の27.8%)のうち、2072万株(同18.9%)を22日に取得する。取得額は約114億円。三井物産は残りの979万株(同8.9%)を引き続き保有する。
大日本印刷は印刷を軸に事業領域を広げてきた。エレクトロニクス事業では液晶パネル部材のカラーフィルター、半導体用のフォトマスクはともに印刷技術を使いガラス基板を加工している。
本業の書籍やチラシの印刷も早くから電子化。この結果、現在では電子書籍や電子カタログの企画・制作なども手掛ける。このほか電子帳票、企業の商品データ、営業日報など様々な電子データを預かり、保有するようになった。これらのデータをインターネット経由で顧客企業が利用できるシステムはすでに販売している。さらに事業を拡大するために大日本はクラウド方式で顧客が安くデータやコンテンツを利用できる仕組みを構築する考え。
クラウド経由でパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など多様な機器にも配信すれば利便性も高まる。
日本ユニシスは国内IT企業の中でもいち早くクラウド事業に取り組み、豊富なノウハウを持つ。大日本はこの大規模クラウドの運用ノウハウを活用できる環境が整う。
大日本がコンテンツ配信などIT事業を強化するのは、これまで利益をけん引してきたエレクトロニクス事業の不振がある。一時、エレクトロニクス事業は大日本の営業利益の3分の1を稼ぎ出した時期もあった。
しかし世界的な薄型テレビ価格の低迷で液晶パネルも価格が下落。カラーフィルターなどの関連部材も採算が悪化した。9日に発表した2012年4~6月期の連結決算でもエレクトロニクス事業は営業赤字が拡大。連結営業利益が66%減の25億円に低迷する一因となった。
一方、商業印刷など情報コミュニケーション事業は企業の広告宣伝活動の回復やICカードの拡大で営業利益が前年同期比2.1倍の37億円に増加。ユニシスとの提携で同事業のさらなる拡大につなげる。