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日本企業に「ジョブズ流」移植 5人組「PARTY」がめざすもの

編集委員 村山恵一

テクノロジーとアートの両方がわからなければ、クールなものはつくれない――。米アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏の経営思想を日本企業に移植しようというベンチャーがある。2011年設立のパーティー(PARTY、東京・渋谷)だ。ソニーやトヨタ自動車、ユニクロなど有力企業を顧客に抱え、IT(情報技術)関係者も注目する。原野守弘最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

パーティーの原野守弘CEO

パーティーは原野氏のほか、伊藤直樹、清水幹太、中村洋基、川村真司の4氏が組んで立ち上げた。5人とも主に広告業界で実績を積んできたが、手掛ける案件はでき上がったものを宣伝する広告の枠を超え、商品開発などに踏み込む。「クリエイティブディレクター」を名乗る集団だ。

「トヨタにもソニーにも、デザイナーはいるし、エンジニア、マーケッター、ビジネスマンもいる。でも、みんなを監督しクリエイティブなものに仕上げるリーダー、つまりクリエイティブディレクターがいないんです。僕らはクリエイティブの監督という機能を商品開発や空間の設計、プラットフォーム開発、コンテンツ制作に使えるのではないか、というところから出発しています」

「スティーブ・ジョブズ氏はテクニカルディレクターであり、クリエイティブディレクターでもありました。ふたつの才能を持った経営者だったのです。だからこそMacもiPhoneもピクサー(コンピューターアニメ会社)もつくれた。しかし、そういう経営者は日本を含め世界的にも多くはいない。僕たち5人はクリエイティブもテクニカルも両方わかる珍しい人種との思いがあります」

パーティーのメンバーが手掛けた案件の例
プロジェクト概要
ソニーのMAKE TV視聴者がスマートフォン(スマホ)アプリを使ってリアルタイムに参加する生放送番組
ユニクロのUU Mapグーグルマップ技術を使ったファッションカタログ
メニコンのMagic薄型コンタクトレンズパッケージ技術を使った商品のネーミング、デザインなど
ウルトラブック・ポップアップシアターインテルが提唱する薄型ノートパソコンコンセプトのPR
NTTドコモとエイベックスのBeeTV動画配信サービスのスマホ用インターフェースデザイン
トヨタ自動車のFT-86 ソーシャルネットワークレーサースポーツ車の世界キャンペーン。運転の楽しさを体験するゲーム制作

「面白い商品をつくろうと思ったら、デジタルやネットワークと組み合わせて新たな価値を加える必要があります。イノベーションに関する知識や洞察がなければなりません。日本の資本主義にクリエイティブディレクションの機能を提供して、日本企業を見違える存在にすること。パーティーはそれをやってみたいんです」

コンシューマー・エレクトロニクス分野では日本発の大型ヒット商品が少ない。原野氏は「機能のてんこ盛り」が日本企業の問題と指摘する。

「いま世の中の人たちはシンプリシティーに格好よさを感じています。きわだって売れるもの、話題になるものはみなシンプルです。ところが日本の商品はあらゆるところにアイデアを盛り込みすぎています」

「企業が商品のシンプルさを貫くには、機能を削っていく決断が欠かせませんが、みんな削ることを恐れている。例えば、役員会では「その機能を削って大丈夫か。他社にはあるんだろう」といった議論になる。逆に機能を盛っていく話なら役員会でOKになりやすい」

 「アップルは商品構成もシンプルですが、ロゴの使い方もすっきりしています。日本の家電メーカーはどうでしょう。企業ロゴがあり、キャッチフレーズがあり、テレビなど商品ごとにもロゴがある」

「BeeTV」のインターフェース

「でも『そんな情緒を込めた商品名がいるのか』『リモコンのデザインもなぜばらばらなのか』と問題提起する人がいないとだめなんです。役員会の多数決で決めるような手法では面白いものはつくれず、無難なものしか生まれません」

パーティーは「クリエイティブラボ(物語技術の研究所)」を自称する。商品に付随する物語を消費者に伝えることがヒットにつながるカギとの考え方が背景にある。

「よくブランドというあいまいな言葉を使いますが、市場を形づくっているものが何かと突き詰めると物語なんです。人間は物語としてしか情報処理できず、物事を認識できません。売れている商品はいい物語を持っています。物語をつくるのがうまい人がいい経営者です。物語がブランドをつくる」

「ベンチャー企業でも起業家でも、うまくいきそうなものとそうでないものを分けるのは、物語性があるかどうかです。例えばアマゾン。『地球最大の書店』と打ち出すことで、インターネット時代の書店という物語が生まれ、それがビジネスモデルの中に入り込んでいます。万事、物語です」

「物語はテクノロジーの影響を受けます。ネットの世界にアイドルが登場し、ネットでなければできないソーシャルゲームも出てきた。テクノロジーの変革期は、新しい物語を生むチャンスでもあります。かなりコンセプチュアル(概念的)ですが、実際にものづくりをしていくうえでコアな話だと思います」

日本企業は「すぐれた技術さえあれば顧客に受け入れられる」とのテクノロジー信仰が強いようにみえる。だが、それでは活路を見いだせないと原野氏は考える。メニコンが売り出した厚さ1ミリの薄型パッケージの使い捨てコンタクトレンズでは、コンタクトレンズらしくないパッケージデザインを提案し採用された。

メニコンの薄型パッケージコンタクトレンズ「Magic」

「メニコンのテクノロジーのすごさは、パッケージの両面が印刷可能なキャンバスになったことです。それを強調するデザイン商品にしたほうがいいと考えました。せっかくのパッケージにありきたりなデザインを印刷してもだめです」

「一般にメーカーの人は『技術で売れる』と考えがちです。でも現実はそうではありません。消費者にとって技術そのものは意味を持たない。技術が持つ物語性、人間にとって気持ちいいものを引き出してはじめて優れた商品になるんです。ちょっと値段が高くてもいいと思える価値がいります。クリエイティブディレクションでリーダーシップをとるパーティーのやり方はいけるんじゃないかと思っています」

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