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人とロボットの共生 情報通信との融合から生まれる未来

安田豊・KDDI研究所会長

日本のアニメの世界では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」というような、誰もが知っているロボットが子供達に夢を与えてきた。そのような経緯もあってか、日本では人や動物に似せたロボットの研究開発が盛んである。

1975年京大工・大学院卒、KDD入社。デジタル衛星通信の研究開発に従事。移動通信のシステム開発などを経て03年KDDI執行役員。11年にKDDI研究所会長に就任。

一方で、最近の大規模災害や原発事故などを契機に、災害時などにも活躍できるもっと実用的なロボットを日本でも積極的に開発すべきだ、という議論が盛んになっている。

実用的ロボットという点では、KDDI研究所もかねてより、海底ケーブルの敷設ルートの調査や保守のために使う自律型の水中ロボット「アクア・エクスプローラ」を開発してきた。この水中ロボットにはカメラをはじめとする各種センサーが装備されており、海上の親船との間は水中通信(音波を利用)で結ばれているのが大きな特徴である。

この水中ロボットの改良版「アクア・エクスプローラ 2000」はその後、クジラなどの大型水中生物の生態観測に使われたり、東大を中心とした海底資源探査のために活用されたりしており、海底ケーブルの調査にとどまらない幅広い活躍をしている。

一方、実用的なロボット開発の先進国である米国では、人型ロボットにこだわらない各種ロボットの開発が軍や米航空宇宙局(NASA)、大学、民間ベンチャー企業などを中心に広範囲に行われてきた。最近日本でも普及している掃除ロボットなどは、その成果の民生活用の典型例である。

無人飛行機やヘリコプターの開発成果なども広く一般に活用できるようになりつつある。米国の大学などでは、ミツバチと同じように羽を震わせて飛ぶ超小型ロボット(RoboBeeとも呼ばれている)の開発なども進んでいる。

カメラなどのセンサー技術や無線通信技術と組み合わせると、人の代わりに空中でいろいろな作業をしてくれたり、いざという時に機器間の通信を仲立ちする地域・期間限定の通信網「アドホック通信ネットワーク」の構築を手助けしてくれたり――というような、実用的な応用の広がりにも期待が持てる。

鉄腕アトムやドラえもんのタケコプターにも見られるように、自由に空を飛べるということは私たちの長年の憧れというか夢であった。このように、人が望んでいることや憧れていることを(自分の分身のように)実現してくれるロボット、あるいは人ができないことや嫌がることを代行してくれるロボットは、人との共生を図るロボットとして、その価値がますます高まっていくと考えられる。

テレビ会議システムと超臨場感通信とを組み合わせるテレプレゼンスと呼ばれる技術が急速に進化している。ここにロボット技術を組み合わせると、自分が行けない場所に分身ロボットに行ってもらって、自分自身があたかもそこにいるかのように遠く離れた人との会話を楽しんだり、自分の望む形で世界の観光地での臨場感体験をしたりできそうである。

体の不自由な人や高齢者の方々にもこのような技術をうまく活用してもらえるようになると、人とロボットとの真の共生時代到来ということになろう。それを可能とするのは、最先端のロボット技術と情報通信技術の融合であり、それこそが私たちが目指しているところでもある。

[日経産業新聞2013年9月12日付]

 この連載は変革期を迎えたデジタル社会の今を知るためのキーパーソンによる寄稿です。ツイッター日本法人代表の近藤正晃ジェームス氏、ネットイヤーグループ社長の石黒不二代氏、KDDI研究所会長の安田豊氏、LINE社長の森川亮氏、ライフネット生命社長の岩瀬大輔氏、NTTドコモ執行役員の栄藤稔氏らが持ち回りで執筆しています。(週1回程度で随時掲載)

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