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遠くの2割より近くの1割引き 「OtoO」に食いつくネット各社

「OtoO(オー・トゥー・オー、O2O)」を知っていますか。オンライン・トゥー・オフラインの略で、インターネット上のつながりをきっかけに、リアルの世界で消費したり出会ったりという体験が生み出されるといった意味を持つ。マーケティング分野で、米国を起点にいま最も注目を集めている「バズワード(話題の言葉)」のひとつだ。

「豚組」では予約の2割近くがツイッター経由。「ドタキャン」は2年間で1件しかないという(東京・港区の店舗)

日本にも、その波が押し寄せ始めた。

東京・六本木などで豚しゃぶやとんかつ店を運営する飲食店「豚組」は、O2Oの威力を実感している。ミニブログツイッターを通じた予約を受け付け始めたところ、直前に予約を取りやめるドタキャン率が激減したという。電話による通常の予約とは何が違うのだろうか。

思わぬドタキャン率の低下をもたらしたのは、ツイッターなどソーシャルメディアならではの"衆人環視"効果とみられる。いい加減な予約を入れられないという無言のプレッシャーが利用者の心理に働いたというわけだ。

ツイッターはメニューや企画の案内を「つぶやき」として発信し、店のファンを束ねている。予約でも威力を発揮している。「豚組」のつぶやきを常に追っているフォロワーは、約9000人。その各個人もフォロワーを抱えている。仮に1人あたり平均で30人のフォロワーがいると仮定すると、単純計算で30万人近くのコミュニティーが仮想空間にあるのと同じだ。

この空間では「誰が、何月何日の何時に来店する」という情報が見え、規律が働きやすい。

ネット大手もO2Oに期待を寄せる。楽天の三木谷浩史社長は、「O2O抜きでは楽天のビジネスモデルは成立しない。O2Oはますます加速していく」と断言する。

同社のネット通販サイト「楽天市場」には、3万7000店あまりの中小店が軒先を連ねる。もはやサイバー空間に閉じた仮想商店街という概念にとらわれている時代ではない、というのが三木谷社長の言い分だ。オンからオフ、オフからオンへの送客を念頭に置いている。

 例えば、楽天が運営する電子マネー「Edy(エディ)」をその接着剤とする。エディを搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)では、顧客がいつどんなものを購入したという履歴に加え、位置情報も把握できるのがカギ。楽天市場の加盟店から「近くのこの店で、いまタイムセールをやっています」といった情報を発信し、顧客をリアル店舗に引き込むことが可能になる。

消費者の側も、常に持ち歩いてパソコン代わりに使えるスマホなどの新端末を使いこなしながら、ネットとリアルで継ぎ目なく購買するようになってきた。価格比較サイト「カカクコム」で欲しい品物をチェックし、最も安い近場のリアル店舗で購入する。交流サイト(SNS)のフェイスブックで、友人が最近お勧めしていた飲食店の近所に来たので、試しに足を運んでみる――といった具合だ。

ネット各社が画一的な全国一律のコンテンツから、こぞって地元密着型の情報発信に傾斜しているのもこうした背景がある。

地域情報総合サイト「ヤフー!ロコ」は利用者が「キープ」ボタンを押して登録すると、店側がお得な情報をメールなどでその都度送る

「消費者は遠くの店の2割引きより、最寄りの店の1割引きの情報が欲しいに決まっている」。ヤフーの喜多埜裕明最高執行責任者(COO)は、こう語る。

ヤフーは6月に地域情報総合サイトの「ヤフー!ロコ」を立ち上げた。路線情報、グルメや美容院情報などをひとまとめにして、地図上に表示する。とりわけ「キープ」機能に工夫をこらした。これは地図上で気に入った店舗の「キープ」ボタンを押しておくと、お得な割引やタイムセールなどの情報がメールで送られてくる仕組み。

サービス開始から1カ月半で、キープ機能が使われたのは100万件。「人々の生活は1年365日のうち、通常は360日ほどは会社か家の周りにいる」と喜多埜COO。ヤフーは「便利な情報を発信することが得意だったが、リアルまで介入できていなかった」として、「ネット→リアル」の送客モデルに知恵を凝らす考えだ。

フェイスブックやミクシィ、ツイッターなどソーシャルメディアの浸透と、スマートフォンなど新型機器の普及。人と人、店と人が24時間・365日つながれる時代だ。O2Oは新たな絆のあり方を問いかけている。

(産業部 杉本晶子)

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