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節電ビル需要の開拓、「まず隗より始めた」ゼネコン

今夏の電力需給対策として政府が東京電力と東北電力管内で発動した電力使用制限令が9日までに終了した。節電意識は高まったが、それでゼネコン(総合建設会社)各社にビルの省エネ性能を向上させる改修工事などが相次いで舞い込んだかといえば、答えはノー。そんな特需はなかった。

まず企業が求めるのは節電効果の実証データ。ゼネコンは自ら社屋などを改修をして、オフィスの節電効果の証拠を示す必要がある。「まず隗(かい)より始めよ」だ。

8月中旬、鹿島は設計部隊などが入居している東京都港区の「KIビル」の6階オフィスを省エネ改修した。天井の建材を撤去し、開発中の次世代照明や最新式の空調設備などを導入。太陽光発電システムや蓄電池などもそろえた。

ビル自体は築20年以上たつが、6階オフィスは最新仕様。省エネの徹底で、二酸化炭素(CO2)排出量でみれば、一般的なオフィスの半分になるはずだ。だが、その性能を証明するデータを鹿島は持ち合わせていない。

そこで、省エネ型ビルの建築とは関係がない土木設計本部に所属する従業員がオフィスを実際に使ってみることにした。節電効果や、オフィスとしての快適さを損なっていないかなどを検証する。

KIビル改修の実証実験には、日立製作所やオムロンなども参加。リチウムイオン電池の充放電制御技術、空調や照明の制御に使う人感センサーなどの共同研究をする。太陽光発電システムは中国の天合光能(トリナソーラー)など複数のタイプについて、性能や施工のしやすさなども比較。省エネ改修に関するデータをきめ細かく収集・分析し、顧客への提案営業に活用する。

「工場には急きょ自家発電設備を入れようとしても、オフィスビルでは我慢するという姿勢が目立つ」。鹿島の長谷川俊雄常務執行役員は顧客企業の「節電の夏」への対応をこう分析する。

電力使用制限令でオフィスの蛍光灯をLED(発光ダイオード)照明に切り替える動きはあっても、空調を最新式にするなどの設備投資に踏み切る企業は確かに少なかった。

ただ、長谷川氏は冷静だ。出勤日の土・日曜へのシフトといった企業努力は、電力不足が非常事態と認識されたから徹底できたとみている。大幅な節電要請が今冬も来夏もと常態化するとなれば、「働く人の我慢ではなく、資金を投入して乗り越えようという動きが出てくる」というわけだ。

今後、企業の節電は工場よりも省エネ対策が遅れがちなオフィスの取り組みがカギを握る。敷地に余裕がある工場ならば自家発電設備や蓄電池などを増設して、電力の供給面を強化できるが、オフィスは設置スペースが少なく、設備増強の余地が小さい。このため、対策は需要の抑制が中心になる。

 デマンドレスポンス(需要応答)――。電力消費を制御して電力需要のピークを抑制する考え方が浸透し出したのも今夏だ。

清水建設は昨秋、東京都江東区にある技術研究所のオフィスを改修し、最新のBEMS(ビルエネルギー管理システム)を導入した。同システムはマイクログリッド(小規模分散型電源)の制御機能やデマンドレスポンス機能を備えている。改修工事後の節電効果を検証中だったが、今夏の電力使用制限令を受け、BEMSを本格運用に切り替えた。

BEMSは天気予報、過去の電力消費履歴などから翌日の電力需要を予測。夜間に蓄熱・蓄電しておき、翌日の電力消費のピーク時間帯に蓄えたエネルギーを使うことで、電力会社から供給を受ける電力量を抑える。7~8月はピーク時の使用電力が前年同期比37.8%減となり、実証データも得られた。

東條洋専務執行役員は「デマンドレスポンス機能が予想通りの効果を発揮し、オフィスは快適だった」と強調する。自社の使用実績を踏まえて、BEMSを外販するほか、BEMSを導入する改修工事の受注活動にも力を入れる考えだ。

竹中工務店も東京本店(東京・江東)や技術研究所(千葉県印西市)で節電改修の工事を進める。バイオマス(生物資源)発電の機能を備えた自家発電設備を新設し、電力供給力を増強。改修にかかる工事費は約12億円で、1億円強の鹿島、清水建設よりも大規模だ。

ただ、電力需要を抑える手段として竹中工務店が強調するのは、清水建設のようなコンピューター制御ではなく、自然の通気をフル活用する設計手法だ。ガラスの外壁の一部を、傾斜した横板を並べた形状の「よろい窓」に切り替えて、自然換気を促すことで空調設備の消費電力を抑制する。竹中も自社の事例を改修工事のモデルとして顧客に売り込む構えだ。

電力使用制限令は解除になったが、今後も電力需給は不透明な状態が続くことが予想される。オフィスの節電の潜在需要を掘り起こす下地は整いつつあり、ゼネコンが省エネ改修を自ら率先した意味合いは小さくないはずだ。また、単に改修工事を請け負うだけでなく、改修後のビルの省エネ性能を最大限に引き出すコンサルティングなど継続的な顧客対応の視点も求められる。

(産業部 山根昭)

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