東電の悪夢、問われる原発の合理性 吹き飛んだ2兆7000億円弱
産業部編集委員 安西巧

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2011/4/12 7:00
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茨城県東海村の実験炉で日本最初の原子力発電が実施されたのは1963年10月。以後、半世紀近くになる国内原発史上で最悪の事故を起こした東京電力が窮地に陥っている。予想される巨額の損害賠償負担に対する懸念から株価が暴落。社債市場では東電債のデフォルト(債務不履行)の可能性まで取りざたされている。「優良企業」の代名詞だった電力最大手を襲った突然の信用瓦解。福島第1原子力発電所の対応を含め、先行きは依然不透明だが、原発ビジネスの合理性を一気に失わせるほど事故のインパクトが大きかった。国のエネルギー政策とともに電力会社の事業体制も見直しを迫られることは避けられそうもない。

ストップ安の362円で取引を終えた東京電力の株価(5日午後、東京・八重洲)

ストップ安の362円で取引を終えた東京電力の株価(5日午後、東京・八重洲)

東日本大震災発生前日の3月10日、東電の株価終値は2153円だった。11日の地震発生が金曜日の大引け14分前だったため、動きが出たのは週明けの14日以降。福島第1原発では1号機(12日)、3号機(14日)、2号機(15日)と次々に爆発し、4号機も15日に火災を起こした。株価は16日に1000円を割り、30日に500円割れ、4月6日には一時300円を下回った。11日の終値は500円。株式時価総額は震災前の3兆4599億円から8035億円に急減。企業価値で2兆6564億円が吹き飛んだことになる。

株価急落の背景には、原発事故のエスカレートとともに「数兆円」といわれる賠償問題の浮上があり、そこに格付け会社による格下げが加わって東電の信用不安に拍車が掛かった。同社の有利子負債は7兆6211億円(2010年9月末時点)、このうち社債の発行残高が約5兆円を占める。震災後、社債流通市場では東電債の国債に対するスプレッド(上乗せ金利)が上昇。残存10年物で震災前は0.1%だったものが先週半ばには2%強にまで急伸した。その差わずか2ポイントとはいえ、5兆円の残高からみれば1ポイントあたり500億円が動く計算になる。同社の財務の窮状は想像に難くない。

信用不安の広がりとともに、東電の「国有化」をめぐる発言が飛び交うようになった。みんなの党の渡辺喜美代表が3月24日の記者会見で「(東電の巨額賠償について)一時国有化も踏まえた検討を始めなければならない」と指摘したのに続き、玄葉光一郎国家戦略相も29日の会見で国有化の可能性を問われて「東電のあり方については様々な議論が当然ありうる」と語り、肯定的な発言と受け止められた。

国有化の是非はともかく、事実上は、東電はもはや政府の後ろ盾なくしては信用を維持できないところに追い込まれている。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は4月1日に東電の長期格付けをAプラスからBBBプラスへと3段階引き下げた。社債が「ジャンク債」扱いを受けないぎりぎりのレベルだが、実はS&Pは同じ発表の中で東電のスタンドアローン評価、つまり政府支援などを考慮しない「単独の信用力評価」を従来のaプラスからbbプラスという投機的水準にまで引き下げてもいる。

「日本政府からの特別支援を勘案しなければ、同社の主要な財務指標やフリー営業キャッシュフローは『BBB』格に見合う水準にとどまらない」とS&Pはコメントしている。少なくとも海外マーケットでは、東電はすでに実質「国有化」された状態とみなされているといえる。

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