日本メーカーの長所が生きる製造装置
日経ものづくり編集委員 木崎健太郎

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2013/4/9 7:00
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世界最大のEMS(電子機器受託生産サービス)企業である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が自社の特徴として訴求していることの一つが、「日本製の生産設備を使っている」ことだ。かつて圧倒的に強かった日本の電機メーカーの地位を脅かしつつある鴻海が日本製の製造装置に頼っていることは、すなわち製造装置分野での日本の強さを表している。

工作機械などで、日本製に比べてはるかに安い中国製や韓国製の製品が次々と出現している。しかし、日本の工作機械メーカーは依然としてハイエンド(高価格帯)の工作機械の国内生産を続けているし、国内工場を増強する動きもある。「ハイエンド製品の精度を求める顧客が確実に存在する」(オークマ)ためだ。高度で難しいユーザーの要求を満たさなければならない装置製品においては、日本メーカーは高信頼性や高性能を実現していることに加えて、顧客からの信頼を勝ち得ている。

日精ASB機械のワンステップ式PETボトル成形機「ASB-70DPH」

日精ASB機械のワンステップ式PETボトル成形機「ASB-70DPH」

例えば、日精エー・エス・ビー機械(日精ASB機械)のPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル成形機。複雑なボトル形状を成形できるワンステップ型の成形機では、同社は約70%の世界シェアを持つ。PETボトルの成形は、溶融樹脂を金型内に射出して単純な形状の中間体(プリフォーム)をつくり、さらにプリフォームを軸方向に延伸したり、圧縮エアの吹き込みで径方向に膨らませたりして目的の形状を得る。ワンステップ式はこの全工程を1台の機械の中で連続的に取り扱う仕組みで、プリフォーム成形と最終成形が完全に分かれる2ステップ式よりも生産スピードは劣るが、より複雑な形状のボトルが得られる。

日精ASB機械が顧客の信頼を勝ち得ているのは、顧客の工場でボトル成形が軌道に乗るまで支援を続ける方針のためだ。「顧客が最終的に欲しいのは成形機ではなくPETボトルだ」(日精ASB機械)という考えのもと、技術者が国内外の顧客先に出向き、順調に成形できるようになるまで成形機を調整したり、顧客の技術者や作業者を指導したりする。それによって、日精ASB機械の技術者もだんだん腕を上げ、温湿度などの環境や工場のインフラが異なる世界各国で複雑なPET成形をものにできるようになった。

顧客から厚い信頼を得ると、その信頼があることによって最先端のニーズを競合他社よりも早くつかめるようになる。そのニーズを満たすための技術を開発し、さらに顧客の信頼を勝ち取れる製品を提供できる。このような"鉄壁のサイクル"ができあがっているのだ。

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