コンビニ、「業態進化」で快走 3~5月経常益7%増
堅調な個人消費を背景に小売り各社の業績が好調だ。2012年3~5月期決算は6日までに発表した54社(新興市場除く)合計の経常利益が前年同期比7%増えた。なかでも好調が際立つのがコンビニエンスストア。ローソン、ファミリーマートは3~5月期としての経常最高益を更新。店づくりや品ぞろえを一変した「業態進化」の効果が収益拡大になって表れた。
■生鮮コーナー導入奏功 「生鮮品や総菜が成長のけん引役だ」(ファミリーマートの上田準二社長)。6日発表の決算は経常利益が3~5月期として最高を更新。06年から導入した生鮮コーナーや総菜が好調で、既存店売上高が3%近く伸びた。現在、約3千店で展開する生鮮コーナーの顧客は「シニアや女性が中心」(上田社長)。
男性サラリーマン中心から主婦、シニア層へ――。コンビニの客層拡大はここ数年の特徴だが、足元でこうした傾向は一段と顕著だ。
最大手のセブン―イレブン・ジャパンの調べによると、来店客のうち50歳以上の比率が5年前の約2割から前期には約3割に上昇。客層拡大が寄与し、3~5月期は営業最高益となった。
背景にあるのは低価格戦略の浸透だ。セブンでは3パックで78円の納豆や、5個100円の冷凍ギョーザなどスーパーの特売並みのプライベートブランド(PB=自主企画)商品を販売。「近くて便利だが高い」という消費者が抱くイメージを一新させたのが大きい。
■デパ地下に対抗 「デパ地下(百貨店の食品売り場)に負けない商品を作れ」。ローソンの新浪剛史社長はデザートなどの商品開発チームにハッパをかける。
「プレミアムロールケーキ」が累計1億7千万個を売るヒット商品になったのを皮切りに、最近はあんみつなど和菓子も投入。「コンビニスイーツ」の定着で、04年に3割弱だった女性客の比率は足元で4割程度に達した。生クリームや砂糖など材料の直接買い付けで材料費も圧縮。低価格ながらも採算は高い。
「業態越え」はコンビニだけではない。「大丸」「松坂屋」を展開するJ・フロントリテイリングは全国の主力店で、若年女性向けの低価格衣料を導入。このほどパルコの子会社化も決め、客層開拓のアクセルを踏む。
半面、「低価格」「生鮮品」という強みをコンビニに奪われつつあるスーパーは苦戦気味だ。6日に決算発表したダイエーは経常赤字で、マルエツも経常減益だ。「コンビニに客を奪われている」(食品スーパー幹部)
大手企業の夏のボーナスが4%減るなど今後、消費環境は厳しさを増すとみられ、業態を越えた顧客争奪戦が一段と激化する可能性がある。