大田区の挑戦、SNSで開発力強化

2011/5/17 7:00
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大田区の中小企業グループが、東日本大震災を機に防災グッズなどの製品開発に乗り出した。交流サイト(SNS)のフェイスブックなどのソーシャルメディアを駆使し、被災地のボランティアなどの声を聞きながら、ネットで情報交換、製品を煮詰めている。

東新製作所の石原取締役

東新製作所の石原取締役

大田区の東京労災病院の近くにある東新製作所。ここの石原幸一取締役が中心人物だ。

当初、開発しようと考えたのが被災地で必要だと言われた風呂。海水を蒸留して被災地で使えるようにする簡易の風呂を考え出した。しかし、現地のボランティアと情報交換するうちに「必要なものが短期間に変わる」ことがわかってきた。

そこで「我々の開発速度を考えると、もう少し中期的な目で製品を考える必要がある」と軌道修正することにした。現在は被災時に生命の安全を守る製品や、72時間以内に救助部隊に発見されやすくする製品などを軸に、同社や協福製作所など4社が時に集まり、時にネットを通じて開発を続けている。

東新製作所はアマダのレーザー加工機や折り曲げ機などを保有する板金・製缶加工メーカー。父親の社長から実質的に経営を任された石原氏が、2009年に2代目経営層の集まりである「おおたグループネットワーク」を結成した。工業展示会などに共同出展、各社の受注につなげてきた。ここまではよくある、グループで受注拡大を目指す中小企業集団の1つ。

おおたグループネットワークは協福製作所など他の企業も機械加工、溶接などの技術を持つが、「町工場が最終製品を開発する」という意欲が強い。そこで製造業だけでなく、学生や有識者、主婦、サラリーマンなども集う「発電会議」を定期的に開き、具体的な製品に関するアイデア出しを続けている。

さらに大田区の企業でも製造業でもないメンバーが入っている。マイクロモノづくり支援企業の「enmono(エンモノ)」(東京・港、三木康司社長)だ。

同社が考える「マイクロモノづくり」とは、少量の高付加価値製品を自社やグループで企画・設計・生産し、ソーシャルメディアを使って販売まで完結するビジネスモデル。すでに同社も企画に参画し、男性向け美顔ローラーなどの商品を世に送り出した実績がある。その同社が外部の専門家を招き、おおたグループネットワークの企業のうち4社が防災関連製品の開発を始めた。

さらに東新の石原取締役は都の産業技術研究センターに製品開発支援ラボの利用を申し込んだ。東北で被災したエンジニアを採用し、現地の町工場のネットワークの意見を取り入れるほか、ミニブログのツイッターやフェイスブックでも現地の情報を集める。災害発生後に必要な防災グッズの生情報を得ながら開発しようというのだ。

「製品が開発できれば自分たちで作るだけでなく、東北からのエンジニアの人に戻ってもらい、地元での生産を支援する」という。東日本大震災でネットは被災情報を集め、広める重要な役目を果たしている。ものづくりでもソーシャルメディアを活用し、復興につなげる。

中小企業が下請けから脱し、自社製品を持つのは永遠の課題。リーマンショック以降、仕事量が激減し、円高で量産品を根こそぎアジアに持って行かれかねない状況だが、新しい動きは確実に起こっている。

(産業部 三浦義和)

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