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ロボVB争奪過熱 米IT大手、日本勢に次々触手

スタートアップスinUSA(7)

スタートアップの世界で最も注目を集めているのはロボット業界だ。米グーグル、米アマゾン・ドット・コムなど世界経済をけん引するIT(情報技術)大手が相次いでロボットベンチャーを買収。世界の有力ベンチャーキャピタル(VC)が血眼になって金の卵を探す。国境を越えた争奪戦の様相だ。

「なんだ、あのロボットは」。3月に米テキサス州オースティンで開催された「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」。スタートアップの祭典でひときわ大きな人だかりができた。

高専発、反響呼ぶ

SXSWの展示会場でスケルトニクスの外骨格スーツが大きな注目を浴びた

アニメに出てくるような搭乗型ロボットが操縦者の動きに合わせ、「手」や「足」を突き出す。名づけて「外骨格(パワードスーツ)」。出展したのは日本の工業高等専門学校が競う「ロボコン」で優勝した沖縄高専のメンバーで構成するスケルトニクスだ。

話題が話題を呼び、米有力紙USAトゥデー、米三大ネットワークのABCテレビが取り上げるほどの人気となった。仕掛けたのは元ACCESS共同創業者の鎌田富久(52)だ。「これほどまで反響を呼ぶとは思わなかった」と笑う。

鎌田は今、TomyK代表としてスタートアップ支援を手がけるが、日本では苦労した。東京大発のSCHAFT(シャフト)は二足歩行ができ、人と同じような作業ができる災害対応ロボットを開発、米国のコンテストで決勝戦に進む実力。

だが1台3000万円のロボット試作費の調達に国内の金融機関やメーカーから色よい返事はなし。最終的に鎌田が接触したのが米グーグル元上級副社長のアンディ・ルービンだ。

 「個人的に出資してくれないだろうか」。スマートフォン用OSアンドロイドを開発、無類のロボット好きで知られるルービンは強い関心を寄せ、出資どころかグーグルによる買収にまで広がった。

昨年末のこの買収は、「霞が関」に衝撃を与えた。「税金が投入された日本の技術が米企業に買われた」というわけだが、日本の大手メーカーや投資家の動きこそ鈍かったと言わざるをえない。

実際に、米大手企業は次々と日本のロボットベンチャーに触手を伸ばしている。「米有力VCや有名企業など世界中から資金や事業提携の申し込みが来ている」。ロボット技術と車の融合を目指すベンチャー、ZMP社長の谷口恒(49)は打ち明ける。「プリウス」をベースにした自動運転車を12年に発売すると海外との連携が急速に増えた。

ZMPは01年に創業。宇多田ヒカルの音楽ビデオに登場するヒト型ロボット「PINO(ピノ)」を製造して名をはせたが、やはり資金調達の壁があり、事業は「倒産直前まで追い詰められた」。08年に自動車向けに注力することで復活した。

「フクシマで活躍したロボットを開発した企業はどこだ」――。米有力VCが探したのが探査ロボット「クインス」。東北大と千葉工業大が開発し、東京電力福島第1原子力発電所の事故処理で活躍した。

防災市場に活路

クインスの開発に携わった東北大教授の田所諭(54)はVCではなく、NPOでロボット開発を進める。その狙いは何か。

米国のロボットベンチャーを支えているのは軍需関連市場。パックボットはもともと地雷探索機だし、手術ロボットで知られる米イントゥイティブ・サージカルも軍需市場が収益の柱だった。

日本でも、小手先のパトロンではなくロボット技術を支える背景となる大きな市場が必要、というのが田所の持論。それが「防災」だ。田所は、「政府が防災市場を作り出せばロボットが収益化する枠組みができる」と提言する。

2月。電子機器の受託製造(EMS)最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(63)が元グーグルのルービンを自宅に招いた。関係者によるとロボット投資について意見交換をしたという。争奪戦は、業種を超えて広がる気配だ。

=敬称略

<ロボットVBを取り巻く課題は>

 ロボットに詳しいソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明所長(53)にロボットベンチャーを取り巻く現状や課題などを聞いた。

――ロボット業界に注目が集まっています。

「2000年代初めにロボットブームが起き、多くのベンチャー企業が生まれた。目新しかったが、何をするのかが不透明だったため、十分な収益を上げられずブームは終わった」

ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明所長

「最近ではロボットの使い道が見えてきた。米国では軍事関連がロボット産業を支えてきたが、物流や福祉、自動車などに広がっている。日本でもサイバーダインが上場するなど成功モデルも出てきた」

――今回がブームに終わらないためには。

「ロボット産業のエコシステムだ。00年のITバブルは崩壊したが、多くの創業者が利益を得て、次のベンチャーに投資するサイクルができている」

「しかし、ロボットは成功者がほとんど生まれずにサイクルができなかった。今回は多くの成功例が生まれて、ロボットに投資する下地ができてほしい」

[日経産業新聞 2014年4月9日付]

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