/

ソニー庇護なき再出発 元子会社、導電接着技術で売上高1000億円へ

ソニーの化学部門が独立して発足したデクセリアルズ(東京・品川)が10月1日に始動した。ソニー本体の事業の選択と集中に伴い傘下から離れた事業だが、売上高に占めるソニー向けの比率は2割と、もともと独立色が強かった。売上高を現在の約2倍の1000億円に伸ばすという当面の目標を実現するには、導電性を備えた接着材料という強みを武器に、環境・新エネルギー分野へと技術の裾野を広げていくことが不可欠となる。

デクセリアルズの一ノ瀬隆社長

「我々にとっては新たな創業。2018年3月期までに売上高1000億円を目指す」。前身のソニーケミカル&インフォメーションデバイス社長からの横滑りで、そのままデクセリアルズ社長に就任した一ノ瀬隆氏はこう気を引き締める。

日本政策投資銀行が60%、投資ファンドが40%を出資する特別目的会社がソニーから同事業を買収した際の買収額は約570億円。投資効果に見合ったキャピタルゲインを得るためにも、デクセリアルズには新たな成長戦略の確立が突きつけられている。

同社の源流はソニーがまだ東京通信工業の名称だった1962年に発足したソニーケミカルだ。トランジスタラジオの小型軽量化には、ネジの代替となる接着剤や粘着テープが有効との考えからまず、ラジオのプリント基板用に接着剤付き銅箔を開発した。その後も電気製品の進化を化学品の面から支え、今は液晶モジュールと表面保護用ガラスの間を埋める樹脂、反射防止フィルムやリチウムイオン2次電池ヒューズなどを持つ。

このうち、現在の主力製品である導電性のある粒子を含んだ樹脂「異方性導電膜」はテレビやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の液晶ディスプレーに欠かせない材料。

ディスプレーのガラス基板とその四方を取り囲むフレキシブルプリント基板を接続して信号を通す役目を果たす。世界の異方性導電膜市場を二分するのが、デクセリアルズと日立化成工業。両社で9割強のシェアを占めるが、中でもデクセリアルズは成長が見込める中小型に強く、材料や生産プロセスの技術を蓄積してきた。

デクセリアルズは導電膜に強みを持つ(栃木県鹿沼市の工場)

欧州やアジアに生産と販売の拠点を持ち、電気製品に使われる高機能品分野に特化しているとはいえ、発足時の売り上げ規模は569億円。化学業界の中では小粒だ。このため、コア技術ともいえる「異方性導電膜」を軸にいかに横展開していくかが最大の課題だ。

一ノ瀬社長が応用分野の一つに位置付けるのが太陽電池市場。すでにセルでつくられた電気を集める金属線を接合する材料を出荷している。現在は金属線を鉛のはんだでつないでいるが、270度に及ぶ熱でセルが曲がる懸念があった。新材料は170度ほどでも接合できる。

もう一つが発光ダイオード(LED)関連。すでにLED用の基板に塗る導電接着剤のサンプル出荷も始めている。基板にLED用ICチップをいっぺんに数百個のせられる。現在はチップをひとつずつ金属材料でつなげている。

ソニー子会社時代から外部との取引を拡大。売上高の8割がソニーグループ以外となっており、直接の影響は少ないとみられる。ただ、ソニー・ブランドが同社の信用力を支え、外部取引の拡大を後押ししてきた面も少なくない。高機能材料にかじを切る三菱ケミカルホールディングスをはじめ、フィルムに強い東レや帝人などとの競争に直面した今、ライバル企業に立ち向かうためには、得意分野に一段と磨きをかけることが最低条件といえる。

(産業部 緒方竹虎)

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

関連リンク

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン