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サムスン、打倒アップルの方程式 発売時期設定や画面戦略に強み

韓国のサムスン電子はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の戦略機種「ギャラクシーS3」の世界販売が5月末の発売から2カ月となる7月末までに1000万台を超える見通しだと明らかにした。従来機を大きく上回る最速ペースで、米アップル「iPhone(アイフォーン)」との販売合戦は一層激しくなる。S3の好調な出足は、サムスンがアップルに対し優位に立ついくつかの長所を浮かび上がらせている。

スマホはサムスンの稼ぎ頭の事業に成長した(申宗均社長、6月25日、ソウル市内)

「7月中には1000万台を超えるようだ」。6月25日、ソウル市内のサムスン電子本社。ギャラクシーS3の韓国での発売に伴う記者会見で、通信部門を所管する申宗均(シン・チョンギュン)社長はこう切り出した。欧州と中東・アフリカを皮切りに販売地域を順次拡大しており、6月28日にはNTTドコモを通じて日本市場にも投入した。

S3は確実にiPhoneの需要に食い込んでいる。ヒット作となった「ギャラクシーS2」は2011年4月に発売し、5カ月で1000万台を超えており、S3は2倍以上の販売ペースとなる。申社長は「S2より評価が高い。韓国では7月までに100万台を超える」と述べた。

爆発的な出足となった理由の一つとして、iPhoneとの発売日を巡る探り合いで絶妙な立ち位置を獲得したことがあげられる。アップルの現行機「iPhone4S」は11年10月発売。原型の「4」は10年6月で、既に2年が経過している。

一方、サムスンは10年6月の「ギャラクシーS」、11年4月のS2に続き、1年周期でフルモデルチェンジする早業を見せ、発売から時間が経過したiPhoneの弱みに付け込んだ。今秋と報じられる次期iPhoneの発売とかち合うことを避け「鬼の居ぬ間に……」とばかりに投入を急いだように見える。

大画面化でアップルとの差異化を狙う(6月25日、ソウル市内)

この間、サムスンは2色用意したS3のカラーのうち濃紺タイプの裏面カバーのデザインが良くないとして崔志成(チェ・ジソン)前最高経営責任者(CEO)が作り直しを命じた。該当する部材は廃棄処分となった。

この一件は「品質にこだわるサムスン」と韓国では美談として報じられたが、発売を急いだがゆえのミスだったという観測もある。だが、それがむしろサムスンの経営の特徴を浮き彫りにした。開発から発売までのリードタイムを短くし、ぎりぎりまで仕様を変更していく。そしてiPhone4Sの勢いが鈍っている絶好の販売機会を絶対に逃さないというサムスンの体質をうかがわせた。

振り返れば、サムスンはコンシューマー商品の発売日を巡る争いで常に先んじてきた。10年2月下旬には3D(3次元)テレビの発売を当初の3月の予定から前倒ししてLG電子やパナソニックに先行。技術力をアピールする機会を逃さないしたたかさを見せつけた。昨年秋にも高速携帯電話サービス「LTE」のスマホの発売でLGに2週間、先行している。

 5月10日には、年内に発売する有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの発表会を開催。具体的な販売量や製品仕様は未定のまま「世界初の有機ELテレビ」という言葉が踊った。LGも年内投入を目指しているが、発表会で先んじることにより、実際の発売で後れを取ったとしても「世界初」と言い続ける条件を整えたかったのだと受け止められている。

申宗均社長は「低価格型のスマホも途上国や新興国で伸びている」と語った(6月25日、ソウル市内)

ギャラクシーS3では次期iPhoneと発売日が近くなるほど、サムスン機の需要が食われ、早ければ早いほど利益は大きくなると考えたはずだ。「タイム・イズ・マネー」の戦いに、サムスンは相変わらずめっぽう強い。

一方、6月25日の会見ではスマホの多機種展開が奏功していることも明確に示した。申社長は5.3型と大型の有機ELパネルを積む「ギャラクシーノート」について「S3とはセグメントが違う」と言い切った。多種の入門機で低価格品を望むユーザーの需要をつかむ一方、上位機でも複数の機種を持つことは明らかに強みになっている。

タブレット端末に近いスマホという位置付けのノートに対し、S3はパネルが4.8型で純粋なスマホとしてはそろそろ大型化の限界が近づいているかもしれない。4型のギャラクシーS以来、サムスンは一貫して大画面化でリード。3.5型を維持するアップルとの違いが、時を経るごとに際立つようになってきた。大画面に慣れると小型に替えにくい効果が出るとの期待もあり、顧客の囲い込みにもつなげようとしている。

サムスンのギャラクシーS3は日本でも人気機種(都内の家電量販店)

無論、アップルには競合を寄せ付けない強みがある。スマホという分野を切り開いたパイオニアであり、コアのユーザー層の厚さと強いブランド力は、サムスンにはまねのできないものだ。iPhoneの操作性や完成度の高さも依然際立つ。サムスンには「アイデアだけで稼げるすごい会社」(幹部)とアップルを仰ぎ見るような空気が依然として残っている。

だがサムスンは最も得意とするマーケティングや、基幹部品を内製するという自らの長所を伸ばすだけ伸ばしてアップルに果敢に対抗している。それが11年7~9月と12年1~3月にスマホの世界販売台数でアップルを抜き首位に立つという結果として表れた。

次期iPhoneはパネルサイズが大きくなるとも報じられている。サムスンは次期ギャラクシーSと次期ギャラクシーノートでiPhoneを挟み込む構え。次期iPhoneに対し、次期ノートを近い時期に投入して勢いをそぐ一方、来年発売の次期ギャラクシーSで一気にたたく腹づもりだ。S3発売の余韻に浸る間もなく、サムスンは次回作に向けてモーレツに動き始めている。

(ソウル=尾島島雄)

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