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「わが家に発電所がやってきた」 変わるか電気の使い方

再生可能エネルギーとデマンドレスポンス

夏の電力ピーク対策として、近年、デマンドレスポンスが有望視されている。電力需要に応じて電気料金が変動する仕組みで、これが導入されることにより、電気の使い方や省エネ意識など、電力を消費する側の姿勢の変化が期待できる。再生可能エネの普及で先行するドイツの消費者調査からも、その効果がうかがえる。

一方、日本では再生可能エネの普及加速を目的とした固定価格買い取り制度(FIT)の導入により、この1年間でメガソーラーと呼ばれる大型の太陽光発電所の設置が急増した。これまでの太陽電池の普及はもっぱら戸建て住宅を中心とした小規模のものが主体であったが、1000キロワットを超えるクラスの大型発電所が続々と建設されている。

買い取り期間終了後、電気の使い方どうなる

2012年7月時点では1000キロワット以上のFIT認定発電所は81件(認定容量約24万キロワット)であったが、13年2月では1755件と20倍以上に、認定容量ベースではなんと約644万キロワットと27倍に達している。再生可能エネルギー全体の認定件数ベースでは1%に満たないにもかかわらず、認定容量ベースでは49%とほぼ半分を占めているのだから、メガソーラーの急増ぶりが分かる。13年2月末現在でFIT認定太陽光発電容量の合計は10キロワット未満が約125万キロワット、10キロワット以上1000キロワット未満が約458万キロワット、上述の1000キロワット以上を合わせると、なんと約1236万キロワットという規模に達している。

さて、FITは10キロワット以上と10キロワット未満では調達価格はほとんど変わらないものの、調達期間は前者が20年に対し、後者は10年とされている。後者の多くが家庭用(一部家庭以外もあるのだが)であることを考えると、現在基本的には1キロワット時あたり38円で今後10年間買い続けてもらえるわけだが、11年目以降はどうなるのだろうか。もし、そのときの電気料金を下回る価格でしか買ってもらえなくなるとどういうことが起きるのだろうか。家庭での発電電力を積極的にグリッドに流し、買ってもらうということがあり得るのだろうか。

もう15年ほど前のことになるのだが、まだ太陽電池の設置費用が1キロワットあたり100万円していた時代である。電力会社の補助を受けて東京、神奈川で130軒あまりの家に平均3キロワット程度の容量の太陽電池を設置して、発電量やメンテナンスその他の問題点がないかなど、包括的な実証実験のお手伝いをする機会があった。現在でも発電電力量のチェック等は引き続き実施中である。

 設置が完了したお宅にアンケート調査を実施し、回答者はお父さん、お母さん、子供さんとそれぞれに太陽光発電所設置の感想をうかがったものだ。答えはきれいに三者三様に分かれていた記憶がある。お父さんは「地球環境に優しく、資源のないわが国にとって素晴らしいエネルギー源である」、またお母さんは「昼間できるだけ節電すると電力会社に売電できるので家計に大いに役立つ。省エネルギー意識向上にも役立った」とあったのに対し、子供さんからの回答が最も印象的だった。「わが家の屋根に新しい発電所ができた。これからはお日様が照ってくれると電気はただで使えるんだ!」

ドイツでの実証試験、通常のデマンドレスポンスと逆

(出所)電力中央研究所

この経験からして、買い取り価格が電気料金より安くなれば、きっとこの子供さんの発想が実際の電力使用活動になるのではないだろうか。となると、これまでナショナルグリッドに流されていた少なからぬ太陽光発電電力が、一斉に家庭内消費に向けられるに違いないと思うのだが、どうだろうか。系統電力側で不安定な太陽光発電電力に対応すべく、さまざまな対応がなされるだろうに違いないが、それが無駄にならないことを望みたいものだ。

さて、このようなことを思い出したのは6月の初旬、2年に1度開かれる欧州での省エネルギーの国際会議(ECEEE 2013 Summer Study)に参加して、おもしろい発表に出合ったからである。

ドイツのボン大学のスタミンガー教授による「変動料金制によるデマンドサイドマネジメントの実効性」と題する論文発表だった。内容は、ドイツ国内における再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光発電など再生可能エネルギーの利用可能量が多い日中などに、安価な料金が適用されるといった仮定の下に消費者がどのような行動変化を起こすかをアンケートにより調査したものである。いわゆるデマンドレスポンスと称される実験だ。

通常のデマンドレスポンスでは、日中のピーク発生時には電気料金が高く設定され、オフピークには料金が安くなる(図1)。ところが、ここでは再生可能エネルギーによる発電電力量の多い時間帯の料金が通常より安くなるという設定だから、全く逆の想定となっているわけだ(図2)。

 この調査では、参加者に対し世帯情報、変動料金実施前後の行動変化などを質問するアンケート調査と、家電機器(ここでは洗濯機、衣類乾燥機、食器洗い機、アイロンの4種に限定して調査している)の時刻別使用状況に関する日誌調査を課している。

スマートグリッド運用に影響も

主な調査結果は以下の通りである。

・変動料金実施前のアンケート調査では、回答者の98%が、光熱費節約が可能であれば家電機器の使用時間をずらしてもよいと回答している。

・変動料金実施中のアンケートでは、81%がエネルギー使用に関し、よい変化があったと回答している。

・使用時間を変更できない世帯は、その理由として、その時間帯にどうしても使う必要があったから、あるいは安価な時間帯に機器を使えない(不在等の理由)といった回答が多い。

・全体として、変動料金制に肯定的な意見が否定的な意見を上回っている。肯定的な意見としては、「光熱費が削減できる」が84%、「再生可能エネルギーによる電気が利用できる」が49%となっている。

・日誌調査においても、例えば衣類乾燥機は変動料金実施前後で、価格の安い時間帯(再生可能エネルギーの発電量が多い時間帯)に使用率が高くなり、一方、価格の高い時間帯における使用率が低くなる傾向が認められている。

先に述べた、わが国の将来の再生可能エネルギー利用の変化の予兆がうかがえるのではないだろうか。すなわち固定価格買い取り制度のような利点がなくなった時点では、家庭では太陽光発電の出力次第でこれまで系統に販売していた電気が、逆に家庭内で集中的に利用されることも決してありえない話ではないだろう。スマートグリッドの運用にもなにがしかの影響があるのではと思った次第である。

(住環境計画研究所会長 中上英俊)

(参考文献)

1)電力中央研究所「米国における家庭用デマンドレスポンスプログラムの現状と展望―パイロットプログラムの評価と本格導入における課題」平成23年3月

2) Rainer Stamminger and Verena Anstett: Effectiveness of demand side management by variable energy tariffs in the households - results of an experimental design with a fictive tariff model, ECEEE Summer Sturdy proceedings, 2013

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