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節水でCO2削減へ TOTOが消費者に新たなアピール

トイレやシャワーなどの節水型商品の使用による、二酸化炭素(CO2)排出量削減の仕組みが整った。TOTOが経済産業省に申請していた削減方法論の提案が認められたもので、同社に限らず各社は、節水型トイレなどを導入するCO2削減手法を使って、排出削減事業に取り組むことが可能になる。TOTOは来年度にも始める見通しだ。一方、トイレの洗浄水量を極限まで減らす節水競争は技術的限界に近づきつつある。消費者への節水のアピールには、今後、CO2削減をからめた打ち出し方が加わりそうだ。

TOTOが2月に発売した最新トイレは、「大」の洗浄水量が3.8リットルと、ライバル、LIXILの4リットルをわずかだが下回った。TOTOの従来タイプの節水トイレは4.8リットル。1リットル減らすために、便器や配水管の形状を変え、昨年LIXILに奪われた業界トップの節水の座を奪回した。

「かつては試作品を切断して断面形状を調べていた。今はCTスキャンなどで簡単に確認できるため、開発期間を短縮できた。ただ、開発競争は激化している」と、開発を指揮したウォシュレット生産本部長の林良祐執行役員は語る。

TOTOのトイレの洗浄水量は20リットルから13、10、8、6、5.5、4.8リットルと減ってきたが、削減幅が鈍化してきのは事実。しかも今回3.8リットルを実現したのは、床方向に下に排水するタイプで、壁方向に横に排水するタイプは従来の4.8リットルにとどまる。便器から排水しても、マンションなどの長い配管の中を確実に流すのが課題だ。各社は今後も節水型トイレの開発を進めるが、新製品で大きく洗浄水量を減らすのは難しくなっている。

TOTOなどの節水型トイレのアピールは、当然まず水道代の節約から始まり、環境意識の高まりに対応して、節水によるCO2削減の仕組みなどを説明する。便座の加熱方法による電気代の削減などもうたうが、単位あたりの水の節約でCO2がどれだけ減るのかは説明しづらかった。直接使う電気が減る省エネタイプの家電に対し、節水トイレは水を減らし、水をつくるのに必要な電気の量が減り、CO2が減るという段階を踏むためだ。

それが昨年12月、経産省の国内クレジット認証委員会にTOTOの提案が認められたことで状況が変わった。国内クレジットとは経産省などが主導して2008年につくった制度で、大企業が資金や技術などを中小企業などに提供して共同でCO2削減対策を実施し、その削減分をCO2排出枠として認証する仕組みだ。排出枠は大企業が買い取る。

 節水によるCO2削減の考え方はこうだ。トイレや風呂などで使われる水をつくるためには、河川などから取り込んだ水の浄化などが必要だ。使用後の排水も処理する必要がある。こうしたことに必要なエネルギーの9割以上が電気だ。節水型トイレなどを消費者が使うことで水の使用量が減れば、ポンプの稼働など、水をつくるための各地の浄水場や下水処理場での電力使用量が減る。それをCO2の削減量に換算するわけだ。

実は、水由来のCO2の排出係数にあたる数値は「水1立方メートルあたり、CO2が0.59キログラム」という値があった。しかし、10年以上前の数値で、その後の上下水道の処理方法の進化や、電力側の排出係数(単位電力消費量あたりのCO2排出量)の変化を反映していなかった。TOTOは過去からの上下水道の処理水量と電力消費量などを調べ、年ごとの水由来のCO2の排出係数を割り出した。その結果、0.44から0.59まで幅があることが分かった。

関係学会に提出されたこの論文も参考に、認証委員会は国内クレジット制度に基づく、排出削減方法の一つとして認めた。自治体により、水道施設の電力使用量や年間給水量が異なるため、実際の運用では地域ごとに排出係数を算出する。

対象は水回り設備を更新する時はトイレとシャワーと浴槽、新規の場合はトイレとシャワーになる。TOTOは水に気泡を含ませることで約35%の節水になる「エアインシャワー」も商品化している。同社の清水康利ESG推進部次長は「節水による水由来のCO2排出削減が認められたのは世界初」という。

TOTOはこれを受けて、「プログラム型」の排出削減事業に乗り出す。2月の認証委員会に計画案を提出した。中小企業などが削減したCO2排出量を大手企業などが買い取る従来タイプとは若干異なり、プログラム型は多数の一般家庭の排出削減量をまとめて排出枠にして買い取る方法。ミサワホームが太陽光発電設備付きの住宅を対象に実施するなど、全国で広がり出している。もちろん、節水型設備による排出削減事業も日本初だ。

TOTOの場合、同社の節水型トイレやシャワーの購入者が、それらの製品を使うことによって実現した節水分をCO2排出削減量に換算する。TOTOが排出削減事業の運営・管理者として、まとめた排出枠を一般社団法人の低炭素投資促進機構と取引する。

清水次長は「広く消費者に呼びかけて、節水による排出枠を環境整備や社会貢献につなげたい」という。今後、提出した排出削減事業の計画案が承認されれば、12年度の削減件数として1000件程度を見込む。同社が推進する水回りのリフォームでも適用になるため、販促ツールとして消費者にアピールできる。

新たな武器はTOTO以外のメーカーも利用できるが、学会論文から準備していたTOTOが一歩先行する形。同社は1日あたりの使用回数や洗浄回数など、トイレや浴室の使用実態の詳細な研究も進めている。

ただ、節水型トイレの開発のハードルが次第に高くなっているだけに、CO2削減効果をあげていくには、適正な使い方による節水の啓発や、国や自治体による節水型商品導入への助成など、業界や行政を巻き込んだ総合的な取り組みの必要性も高まっている。

(産業部 三浦義和)

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