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増資で学んだこと

柳沢大輔・カヤック社長

僕たちの会社はサイコロで給料を決めるといった面白い制度や、バスをラッピングして全国を旅しながら説明会をするといった採用活動などを全力で考えて投資してきた。それが創業期から名付けている「面白法人」というキャッチコピーに起因していることを前回は説明した。

これは、会社のブランディングともいえる。ブランドの価値は測りづらいが、それは資産となり、資産価値があがれば企業の将来にプラスとなる。つまりブランド価値の増減をバランスシートのように捉えるべきだと考える。そしてブランドは、一貫した姿勢がなければ構築できない。社名を聞いて世の中の人が一定のイメージを思い浮かべる会社には必ず一貫した姿勢があるだろう。

米アップルなら「シンプルでかっこいい」。そういうふうに人々は思い浮かべる。これはアップルがシンプルであることにとことんこだわってきたから生まれたイメージだ。

この一貫性を保つ方法は、大別すると2つあると思う。社長がカリスマ性を発揮し、その社長の理念を会社の隅々まで浸透させる方法。もうひとつは、経営理念など「経典」のようなものをつくり、浸透させていく方法だ。

僕は自分をカリスマ化させる方向は望んでいないため、「面白法人」は理念を重視し言語化する作業に力を注いできた。その結果「面白い」ブランドの構築は進んだ。

数年前、各事業が急に伸びはじめた時期があった。各事業部長が事業戦略について勉強しはじめた頃だが、改めて実感したことがある。

会社にはもともと事業戦略と組織戦略が存在する。一般的には事業戦略が先であろう。だが「何をするかより誰とするか」を大切にするカヤックは、極端に言えば、一緒に働きたい仲間となら、事業はなんでもよいという思想をベースにもつ。そのため組織戦略の方が先行した会社となり、そこに重点を置いてきた。

ところが、数年前の数字を見て事業が伸びるためにはやはり事業戦略が必要であると、改めて実感させられた。会社が永続的に成長するためには、実は事業戦略も組織戦略も本来どちらも必要不可欠であり、事業戦略だけでは1度は当たっても2度目はないし、ましてやブランドはつくれない。企業が規模の拡大を目指すためにも双方が必要だ。

 もちろん、これからは必ずしも大きいことがいい時代でもないので、企業には規模の拡大を追わないという選択もある。規模を追わず、好きな仲間と好きな仕事をする。これもすてきなことだ。

規模の拡大を目指すステップとして、2011年に外部資本を入れることで成長を早め、公的な存在となるチャレンジをすると決めた。それまで創業者3人で100%の株を保有していたことを考えると組織として一つの大きなターニングポイントとなった。

僕自身の気づきもかなりあった。第三者のお金を預かり会社を経営していくということはどういうことなのか。資本政策だけは後戻りが利かないというのはどういうことなのか。会社が成長するとどういう社会的責任を伴うのか。株式会社という仕組みはどういう意図でつくられたものか。その仕組みを通して会社や個人はどう成長できるのか。

このチャレンジにはメリットもデメリットもあるが、選択をしたことで、以前よりもより深く考えることができるようになった。結果、会社としても個人としても成長できていることに感謝している。

[日経産業新聞2012年10月4日付]

 この連載は変革期を迎えたデジタル社会の今を知るためのキーパーソンによる寄稿です。ツイッター日本法人代表の近藤正晃ジェームス氏、カヤック社長の柳沢大輔氏、トヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏、ネットイヤーグループ社長の石黒不二代氏らが持ち回りで執筆します。
(週1回程度で随時掲載)

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