2019年1月17日(木)

アマゾンの引き立て役になりかねない楽天コボ  カギは「UX」の追求
編集委員 小柳建彦

(2/2ページ)
2012/8/2 7:00
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正直な感想を言おう。このサービスはまだ開発途上だ。ITの世界でいうとβ(ベータ)版よりかなり手前の段階にあるといわざるをえない。この状態で本番商用稼働させた楽天の勇気には驚くほかない。

米アマゾン・ドット・コムが1995年にインターネット上の書店としてサービスを開始したとき、まず人々をとらえたのがその使いやすさだった。もっと分解すると、ウェブサイトの各ページの設計、ブラウジングによる本のショッピングのしやすさ、検索による本のみつけやすさ、各書籍の各種情報の充実度、商品の価格と購入決済のしやすさなどなど、多くの要素で構成される使いやすさだ。ウェブ上の店に来店した瞬間から、本を買って届くまでの一連の体験全体、つまりUXが優れていた。同社が創業以来何年も債務超過を続けているあいだも株式市場が見捨てず一定の時価総額を維持させ続けたのは、投資家や投資銀行のアナリストが実際に使ってみて直感的にサービスの競争力の強さを感じていたからに違いない。

消費者の立場に立ったUXに対する徹底したこだわりが、同社が電子商取引(EC)サイトの世界最大手に君臨し続ける原動力となっている。ECだけでなく、クラウド上でITインフラを提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が、ウェブ上でサービスを提供する際の標準的なインフラの選択肢として世界に浸透したのも、料金を含むUXの競争力が原動力だ。

楽天の子会社コボ社製の電子書籍端末「コボタッチ」=共同

楽天の子会社コボ社製の電子書籍端末「コボタッチ」=共同

アップルが倒産寸前の状態から復活し、時価総額世界一まで上り詰めた最大の要因も総合的なUXの追求だった。iPod(アイポッド)という端末とiTunes(アイチューンズ)というパソコンソフト、そしてiTunes Store(アイチューンズ・ストア)というネット上の音楽店を組み合わせ、ネットで音楽を見つけ出して購入し、端末に入れて持ち歩いて楽しむという一連の体験の心地よさを総合的に追求してきた。その延長線上に現在のiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)の好調がある。

コボを使ってみると、ついついアマゾンやアップルの考え抜かれたUXの水準の高さを思い起こしてしまう。取扱点数や端末の価格でアマゾンに対抗しようという楽天のチャレンジ精神は大いに買いたいところだが、「打倒」を叫ぶ前にもっともっとUXについて研さんを積まないと、アマゾンが今秋「キンドル」を日本でスタートさせた際、コボはかえって引き立て役になってしまうだろう。

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