生物の分布調査をスマホで ITが変える自然環境保全

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2013/2/4 7:00
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環境保全活動にIT(情報技術)を活用する動きが広がってきた。ITといっても難しいものではない。ケータイ1つあれば、だれもが調査員。身近な草花や生き物を撮影し、メールで送るだけで、あっという間に全国の分布図ができあがるのだ。市民からの投稿によって、西日本に分布していた生き物の北上が進んでいることもわかってきた。

富士通とNPO法人が多摩川で実施した植生調査

富士通とNPO法人が多摩川で実施した植生調査

東京都と神奈川県の県境を流れる多摩川。富士通は特定非営利活動法人(NPO法人)、多摩川エコミュージアムなどと組み、2011年から水辺の草花を調査している。調査は簡単。稲城市と調布市を結ぶ多摩川原橋から河口までを4区間に分け、ケータイやスマートフォン(スマホ)で植物を撮影。メールに添付して送るだけだ。

送られた投稿の画像には全地球測位システム(GPS)による位置情報がひも付けされているため、地図上にマッピングできる。データが集まるほど、より精緻な分布図ができる。

調査によって、身近な草花の意外な分布がわかった。ノギクは東急東横線の架橋(多摩川駅付近)から上流にのみ分布している。一方、ハマダイコンは第3京浜道路の世田谷区と川崎市高津区を結ぶ新多摩川橋より下流にだけ分布する。

なぜか。「土壌に含まれる塩分の違いではないか」。富士通の環境企画統括部の畠山義彦氏は分析する。多摩川の下流は海水がさかのぼる汽水域。土には塩分が含まれる。塩分を好むハマダイコンは育つが、塩分を嫌うノギクは汽水域の岸辺には分布できないというわけだ。分布の違いは感覚的にわかっていたが、境界がピンポイントではっきりした。

セイタカアワダチソウの分布

セイタカアワダチソウの分布

気がかりなのは要注意外来生物であるセイタカアワダチソウの分布だ。上流から下流まで、全区間で分布が確認された。どんな環境にも耐えて繁茂する生命力の強さが裏付けられた。

富士通が愛知教育大学と連携して実施した12年の「全国タンポポ調査」では、西日本に分布するシロバナタンポポの北上がデータ上、確認された。11年は東日本大震災の影響で東北地方からのデータが少なかったこともあり、断定はできないが、地球温暖化が影響した可能性もある。

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