中国、通関手続き厳格化 輸出入遅れに懸念
【北京=多部田俊輔】中国の税関当局が、レアアース(希土類)の対日輸出だけでなく、一般の貨物の輸出入の通関検査を厳しくしている。書類検査でなく抜き取って梱包を開ける検査の比率を大幅に引き上げたことで、通関手続きが手間取り、貨物の輸出入に遅れが出てきた。休暇シーズンで現時点では影響は限定的だが、日本企業は長期化を懸念している。

「完成車メーカーには迷惑をかけられない。すぐに日本の工場から部品を輸入するように指示した」。日系自動車部品メーカー幹部は明かす。27日までに通関が完了する予定だった自動車部品が港で検査待ちの状態。今後は早めに発注する。
日本通運によると、通常は抜き取り検査の日本向け航空貨物の一部が21~24日に全量検査となった。25日から抜き取り検査に戻ったが、現在でも検査が完了していない荷物が残る。海運貨物は抜き取り検査の比率が上がったという。
近鉄エクスプレスによると各税関当局によって対応は違うが、日本向けの航空貨物について通常は10%程度の抜き取り検査の割合を5割以上に引き上げたもよう。一部荷物が予定通りの航空機で送れない例も出ている。
英語に加え中国語の通関書類も求められているほか、日本向け荷物だけ書類検査を意図的に後回しにしているケースもあるという。
上海の税関当局関係者によると荷物を企業の「信頼性」(関係者)によって3種類に分類、Aランクの荷物は抜き取り検査の比率を10%、Bランクを50%、Cランクを100%とする通達を受けたという。日系物流会社は「通達は口頭で期限も未定。分類の根拠も明らかではない」と漏らす。
中国は22~24日が「中秋節」の休日で、10月1~7日も「国慶節」の大型連休。工場の稼働率が下がり物流量も減るため、影響は目立っていない。通関の厳格化は25日に緩和されたとの情報もあるが、「10月半ばまで続けば、多くの日本メーカーにも影響が出る」との見方も出ている。アルプス電気は「現時点で中国での事業に影響があるとの報告はないが、27日朝から本格的な調査を始めた」という。
中国当局が21日に日本向け観光ツアーの販売自粛を通達した影響も出ている。北京市の大手海外旅行会社幹部によると11月の団体旅行を中心に5千人以上のキャンセルが出た。通達によると自粛の当面の期限は今月29日。同幹部は「撤回がなければスキーと温泉で集客する予定だった冬の北海道ツアーに悪影響が出るだろう」と見る。
東京都内の主要ホテルの一部などでは中国要人の訪日中止に伴うキャンセルが出ている。