福島県全域でコメ出荷可能 放射性物質規制下回る
福島県は12日、コメを作付けした全市町村で収穫後の本調査を終え、放射性物質の量がすべて国の暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)を下回り、県全域で出荷が可能になったと発表した。県の関係者やコメ卸業者には安堵感が広がったが、店頭ではなお不安視する見方もある。風評被害の払拭が今後の課題となる。

福島県の佐藤雄平知事は同日、「県産米の安全性が確認された」と安全宣言を出し、昨年の生産量が都道府県別で4位だった県産米を全国の消費者にアピールする考えを示した。
県によると、調査した1174地点のうち8割以上の964地点で放射性セシウムが検出されなかった。100ベクレル未満は203地点、100ベクレル以上200ベクレル未満は6地点だった。
検査をしたのはもみ殻を除去しただけの玄米。セシウムを含んでいても、そこから表面の薄皮である糠(ぬか)を取り除いて白米にしたコメの放射性物質は大幅に減るとみられている。
農林水産省の関係者も胸をなで下ろす。牛肉のセシウム汚染問題では後手に回ったと批判を浴びたが、コメについては「4月に福島第1原子力発電所の警戒区域など周辺12市町村で、あらかじめ作付けを制限するなど計画的に対策を打った効果が表れた」という。
福島県全域で新米出荷が解除されたのを受け、コメ卸業者からは歓迎する声が上がった。同県郡山市のコメ卸、東北むらせの村瀬慶太郎常務は「今後、積極的に販売していきたい」と話す。コメ卸大手の木徳神糧も「例年通り販売できるようになった」と期待する。
だが、卸間価格には流通業者の慎重な姿勢が表れている。品質の高い会津産コシヒカリは60キログラム1万5千円台前半が中心。例年ならほぼ同水準の富山産などに比べて千円ほど安い。中通りや浜通り産のコシヒカリも茨城産や千葉産より安い同1万4千円前後で取引されている。
今回の本調査で福島県二本松市の1地点から、470ベクレルの値のセシウムが検出された。県はこうしたコメは全量を買い取って流通させず、消費者の不安を払拭したい考えだ。