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働く高齢者に配慮、年金減額幅を圧縮 厚労省案

負担増の労使、反発必至

厚生労働省は11日、働きながら年金をもらう「在職老齢年金制度」の見直しに着手した。60~64歳で働く会社員は給与と年金の合計が月28万円を超えると年金が減額される仕組みがあるが、減額幅を圧縮して受給額を増やす改革案を示した。高齢者の就労意欲に配慮する。年金財政の悪化を防ぐため、年金の支給開始年齢を68~70歳に引き上げる改革案も示した。いずれも労使の反対が強く、実現するかは不透明だ。

政府が6月に決めた社会保障と税の一体改革を受けて、厚労省は社会保障審議会年金部会で具体化作業に入っている。11日は、在職老齢年金の見直しと支給開始年齢の引き上げについて議論した。

在職老齢年金は60歳以降も働きながら厚生年金を受け取る人の年金額を調整する仕組み。現行制度では60~64歳の場合、給与(ボーナス込みの月収)と年金の合計が月額28万円を超えると、28万円を超えた分の半分だけ受け取る年金が減額されている。65歳以上は合計額が46万円を超えると年金が減る仕組みだ。

この制度は収入が増えると年金が減額されるため、シニア層の働く意欲を阻害しているとの指摘がある。このため厚労省は60~64歳について、(1)減額する基準を65歳以上と同じ46万円に引き上げる(2)60歳代の給与の平均額(33万円)に引き上げる(3)60歳代前半は年金の調整そのものを廃止する――という3つの見直し案を示した。

現在は60~64歳の約120万人が同制度に基づいて年金を減額されており、減額分の総額は年間1兆円に上る。減額幅が圧縮されれば、働くシニアの年金は今より増えることになる。「年金が減るくらいなら働くのをやめよう」と考えていた人が減り、60歳以降も働き続ける人が増えるとの判断だ。

ただこの財源は厚生年金の保険料で賄うので、改革を実施すると現役世代の会社員と企業の負担が増える。厚労省の試算では調整廃止で年1兆円、基準額を46万円まで上げると5000億円、基準が33万円なら2000億円の追加財源がかかる。46万円の場合で厚生年金の保険料は年率0.2~0.3%の引き上げが必要だ。このため同日の議論では労使から見直しに反対する意見が出された。

60歳代前半で働く人の年金額はかつて一律2割削減していた時期もあったが、2004年の改正で廃止された。こうした見直しの結果、「今の制度はすでに就労を阻害する効果が小さくなっている」との意見もある。

制度の恩恵を受けるシニアが特定の世代だけに集中するという問題もある。厚生年金の支給開始年齢は65歳まで段階的に引き上げることが決まっているためで、制度改革で年金が増えるのは現時点で51歳~60歳代前半の人に限定される。

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