ウナギの頭、大阪ではなぜ食べる(謎解きクルーズ)
食材無駄なく始末の精神 1匹丸ごと焼く慣習

2014/7/2 6:30
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土用の丑(うし)の日を前にニホンウナギが絶滅危惧種に指定され、話題を集めた。ただでさえ最近はウナギが高騰し、気軽に手を出せない。安く味わう方法はないか探すと、大阪ではウナギの頭を食べる習慣があるとわかった。関東では見かけないのに、なぜ大阪だけで普及したのか。

焼いたウナギから頭を切り落とす(大阪市旭区の魚伊本店)

焼いたウナギから頭を切り落とす(大阪市旭区の魚伊本店)

ウナギの頭を求めて1867年(慶応3年)創業の「魚伊本店」(大阪市旭区)を訪ねる。かば焼きの香ばしい匂いが漂う。店員に声をかけると、パック詰めした頭を出してくれた。「半助、108円です」。15匹分が入っている。

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大阪ではウナギの頭を半助と呼ぶ。「関東では半助は食べません。焼き方が違うから」と半田広行社長。関東では焼く前に頭を落として蒸す。関西は1匹丸ごと火にかけ、焼き上がってから頭を落とす。料理店を営む人や年配の女性が、ダシ取り用に3、4パックまとめ買いしていくケースが多いという。

同店で一番人気のうな丼は3700円。ウナギの高騰に伴い、20年前の1500円から徐々に値上げしてきた。一方、半助の税抜き価格は変わらない。「サービスで置いているものだから」と半田社長。もっとも、「食べ方を知らない方が増えてきた。骨が多いので注意してほしい」と話す。

最近は関西でも関東風に蒸してから焼く店が増えた。関西風の店も半助を販売しないところが多い。あまり見かけない食材だ。

大阪料理を指南する広里貴子さんを訪ねた。「半助は脂が乗っているので、濃厚なダシがとれます。まったりしたコク、甘みが特徴で、美容にいいコラーゲンもたっぷり」とほほ笑む。

ダシの入った鍋に手際よく半助、豆腐、ネギ、うどんを入れて煮込む。半助は木津市場で仕入れてきた。最後に卵を落とし、数分間で「半助鍋焼きうどん」の出来上がり。

汁はまろやかで香ばしい。半助をしゃぶるとうま味がしみ出す。わずかに付いた身も味わえて想像以上においしい。半助と豆腐を一緒に炊く大阪の郷土料理「半助豆腐」をアレンジした広里さんの特製料理だ。庶民の味として親しまれたが、今は家庭で作る機会は減っているという。半助のダシで雑炊や丼ものをつくっても「ウナギの風味が楽しめる」と広里さん。

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ウナギの頭「半助」を使った鍋焼きうどん

ウナギの頭「半助」を使った鍋焼きうどん

広里さんは昨年、NHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」の料理指導を手がけた。大正、昭和の大阪が舞台。食べることが大好きな東京出身の女性が嫁ぎ先で炊事に奮闘する。家計のやりくりに悩む主人公を助けたのが、豆腐と野菜を入れた半助鍋だった。

放送後、「どこで食べられるのか」という問い合わせがNHKに相次いだ。岡本幸江チーフプロデューサーは「ウナギの頭を料理に使うとは、現代っ子は思いつかない。驚きと、食材を無駄なく使うお得感が関心を呼んだのでしょう」。

半助という名前の由来は何だろう。「大阪ことば事典」(講談社)をひもとくと(1)1円(明治、大正時代に円助と呼んだ)の半分の50銭で売っていた(2)明治時代、半助という男がウナギの頭を売って小遣いを稼いでいた――などとある。

食文化研究家の奥村彪生さんは「半助は食材を無駄なく使う始末の精神を象徴する」と説明する。食い倒れの町、大阪に根付く考え方で「ケチ、貧乏くさい、とは違う」。しかし、バブル期のころから、こうした志向は薄れ、その後のデフレで安価な食材があふれたことも始末の精神が廃れる要因になったという。

現在のようなウナギのかば焼きは18世紀に生まれたとされる。明治期には半助が売られるようになり、大阪で庶民の味として定着したようだ。1960年代までは、専門店の店頭に「半助あります」と表示が出ていたらしい。

「まるごと食べ尽くすのは、食べ物への礼儀。どうやっておいしくしようか、考えるのは楽しい」と奥村さん。丑の日には大阪の食文化から生まれた半助鍋を家で味わってみよう。

(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)

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