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熊本地震 「新耐震基準」導入後の住宅に明暗

日経ホームビルダー
2016年4月16日に発生したマグニチュード(M)7.3が本震、14日のM6.5が前震となった熊本地震は、多くの建物に被害を与えた。家づくりの実務情報誌「日経ホームビルダー」では、新耐震基準の導入以降に建てられた住宅が、前震と本震でどのような被害を受けたかに注目。記者が建築の専門家と共に現地を取材した。

本震の発生後、木造住宅の耐震診断と補強に詳しい耐震研究会(東京都世田谷区)の建築実務者数人と、熊本県益城町に向かった。取材目的の第一は、新耐震基準導入以降に建築された木造住宅の、被害状況を知ることだ。

木造住宅の耐震性能は、1981年より前の旧耐震基準と、81年の新耐震基準導入以降で大きく異なる。今回ほどの大地震に、旧耐震基準で建てられた住宅が持ちこたえるのは難しいと予想されたため、新耐震基準導入以降の住宅に絞ろうと考えた。

益城町の被災住宅は、本震を受けて前震のときより急増していた。全てを見て回り、該当する被害を探し出すには時間がかかる。そこで、本震の発生前に放送されたテレビ番組を見直したところ、益城町の西側にある安永地区周辺の映像に、倒壊している比較的新しい住宅が2棟映っていた。その情報から住所の見当を付けて現地に向かった。

現地に到着すると、土ぶき瓦の、いかにも古い住宅が数棟並んで倒壊し、道を塞いでいた。旧耐震基準の住宅だ。一方、その向かい側の住宅数棟には、目視では大きな建物被害は確認できなかった。使われている外装材などから、新耐震基準導入以降ではないかと推定される。

通りの左側は、旧耐震基準と思われる古い住宅が並んで倒壊し、道を塞いでいる。通りの反対側は新耐震基準導入以降と考えられる住宅で、外壁には目立った被害は見られない(写真:日経ホームビルダー)

先に進むと、探していたうちの1棟を発見した。木造2階建てのアパートで、1階が完全につぶれていた。土台と基礎はアンカーボルトで固定されているが、土台と隅柱にホールダウン金物がない。このことから、新耐震基準導入以降の住宅だと判断した。新耐震基準導入以降の住宅が、本震の前に倒壊していたと考えられる。

前震で倒壊した2階建ての木造アパート。通り側に大きく傾いている(写真:日経ホームビルダー)

「本震で倒壊した住宅が多い」

アパートの周りの地面には、南北方向に亀裂が多数生じていた(写真:日経ホームビルダー)

アパートの周りの地面には、大きな亀裂が南北方向に走っていた。前震について気象庁は、活断層が南北方向に引っ張られて動いた「横ずれ断層型の地震」と説明している。亀裂は活断層のずれと同じ向きになる。

アパートから離れると、家の外に避難している住民に出会った。家が倒壊したので、前夜は車中で過ごしたという。「自分の家は古いので前震で倒壊したが、周りは前震では自立していたものの、本震で倒壊した住宅が多い」と話す。探していたもう1棟について尋ねると、場所を教えてくれた。前震で倒壊したという。この住宅は、1階が崩壊して元の場所から2m以上移動していた。

1階がつぶれていた新耐震基準導入以降と思われる住宅。前震で倒壊し、住民が亡くなっている(写真:日経ホームビルダー)

使用されていた建材から、新耐震基準導入以降の住宅だと推定される。この住宅の外壁には、以前は接続していたと思われる母屋の跡があった。隣には旧耐震基準の古い母屋が、この住宅に倒れ掛かるように倒壊していた。

調査を共にした耐震研究会代表理事の保坂貴司氏は、「古い母屋に新しい住宅を増築していて、地震で古い母屋が倒れた影響で増築部も被災したと思われる」と話す。

上の写真で示した住宅とつながっていたと思われる、旧耐震基準の古い母屋も倒壊している(写真:日経ホームビルダー)

この住宅の向かい側には、使われている外装材から、新耐震基準導入以降と推定される住宅が建つ。隣の家が全壊した影響で外壁の一部が傷付いているが、そのほかの被害は目視では確認できなかった。

上の写真で示した住宅の向かい側に立つ、比較的新しい住宅。倒れた隣の家の影響で外壁の一部が傷付いたが、それ以外の建物被害は見られない(写真:日経ホームビルダー)

今回取材した限られた地域内でも、新耐震基準導入以降と思われる住宅で、前震で倒壊したものと、前震と本震を受けても被災が目視で確認できないものが存在していた。日経ホームビルダーでは引き続き、新耐震基準導入以降の住宅の被災状況の取材を進めていく。

(日経ホームビルダー 荒川尚美)

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