キャリア異なる2人 セーリング・宮川、高野組(上)

2016/4/24 6:30
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キャリアの大きく異なる2人が、ペアを結成して半年で、8月のリオデジャネイロ五輪代表の座をつかんだ。セーリング(ヨット)の競技歴が20年に及ぶ宮川恵子(和歌山セーリングクラブ)と、競技を始めてわずか3年半の高野芹奈(関西大)。リオ五輪を現役生活の集大成と捉える29歳と、その先にある東京五輪を視野に入れる18歳。それぞれの思いを胸に、ともに初の五輪の舞台に挑む。

セーリング女子49erFX級の宮川恵子(左)、高野芹奈組

五輪種目では最速、「海のF1」

船の形や帆の大きさなどの違いでクラスが分かれ、リオ五輪で8艇種10種目が実施されるセーリング。2人が出場するのは今大会から新種目になった女子の49er(フォーティーナイナー)FX級だ。全長4.9メートル、幅2.9メートル、重量125キロの船は、両側が翼のように広がり、船底が水に接する面積が他のヨットより小さい。推進力に優れ、最大速度は時速約40キロ。五輪種目では最速を誇り「海のF1」とも呼ばれる。

宮川が舵(かじ)を切って船を操るスキッパー、高野が帆を操りスピードを調節するクルーを務める。それぞれ別の選手と組んでいた2人がペアになったのは、昨年3月に日本セーリング連盟が始めた49erFXの強化プロジェクトへの参加がきっかけだった。五輪に向けた選手発掘のため、さまざまなメンバーと練習を重ねていくうちに「船のバランスの取り方、スピードの出し方などの感覚がぴったり合う。すごく相性がいいと思った」と宮川。国体終了後の昨年10月から、経験の浅い高野と本格的に組むことになった。

ナショナルチームの国内選考を経て臨んだ今年3月のアジア選手権(アラブ首長国連邦・アブダビ)。リオ五輪の国別出場枠1を巡る6日間、計8レースの大会には、7艇のうち日本から4艇が参加、優勝して出場枠を獲得した日本ペアが即、五輪代表に内定することになっていた。総合得点で争う大一番で、宮川・高野組は3レース目まで全て4位と大きく出遅れた。

潮目が変わったのは第4レースだ。うまく風をつかみ初めて1位となり、第5、第6レースも制して「ライバルを慌てさせたのが大きかった」と宮川。日本の3艇が首位で並び、どのペアにも五輪出場の望みが残る状況で最終日を迎えた。

「海を滑走するのは純粋に楽しい」

運命を決める最終レース会場に向かう2人に、ナショナルコーチの鈴木国央は1枚のリポート用紙を手渡した。ペンで書かれていたのは「楽勝」の2文字。「『らくしょう』ではなく『楽しく勝つ』と読みなさい」と鈴木は言った。

能力の限界を感じて一度は競技から離れた経験のある宮川と、中学3年で競技を始め、魅力にのめり込んだ高野。来歴に開きはあれど、「海を滑走するのはやはり純粋に楽しい」との思いは一つ。原点に立ち返って臨んだ最終レースで序盤から首位に立ち、弱風が吹く得意の天候にも恵まれた。リードを広げて独走のままゴール。夢に見た舞台への挑戦権を手にした。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊4月18日掲載〕

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駆ける魂(宮川、高野組)

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