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男子バドミントン・桃田を勘違いさせたもの
編集委員 北川和徳

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2016/4/15 6:32
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スポーツを取材してきた記者として考えさせられることが多い事件となった。男子バドミントンの日本の新旧エース、桃田賢斗(21)と田児賢一(26)らが違法な闇カジノ店で賭博をしていたことが発覚、桃田は事実上決まっていたリオデジャネイロ五輪代表の座を失った。国などから多額の補助金も投じられて五輪の金メダル候補にまで育ったスポーツエリートの不祥事は、日本のスポーツ全体への信頼を揺るがす事態になっている。

なぜやめられなかったのかと問われ

8日、違法カジノ店での賭博について記者会見するバドミントンの桃田(右)と田児

8日、違法カジノ店での賭博について記者会見するバドミントンの桃田(右)と田児

8日に開かれた所属企業のNTT東日本による桃田と田児の会見。明るい色だった髪を黒く染め直して現れた桃田の謝罪に「それを言ってしまうのか」とひっかかる部分があった。なぜやめられなかったのかと問われ、「スポーツマンとして勝負の世界で生きている以上、ギャンブルというものに興味があり、抜けられない自分がいた」。

違法行為について謝罪する場。これでは「スポーツマンだから違法なギャンブルもするんです。大目に見てください」と言い訳しているようなものだ。スポーツで結果を出せば何をやっても許される。桃田が陥った悲しい勘違いがこの言葉に集約されている気がした。

テレビの識者のコメントでは「幼い頃からスポーツばかりしているから社会常識がない。もっと社会人としての行動規範から教えるべきだ」などの意見もあった。正直、スポーツへの偏見ではないかと首をかしげたくなる。スポーツ選手の不祥事のたびにこうしたコメントを流すメディアほど、五輪でメダルでも取ろうものなら今度は選手の人間性を含めて無条件に称賛する。

違法カジノ店が別にスポーツ選手だけであふれているわけではないだろう。賭け金の高さからいっても、客には様々な経験を積んだ社会的地位が高い人もいると想像できる。高学歴であるはずの政治家や官僚たちの耳を疑う愚かな行為だって後を絶たない。犯罪ではないが、先日も国会で大臣の答弁そっちのけで携帯電話をいじって読書をしている元新聞記者の女性議員がいた。社会常識としての行動規範を身につけていないのは一部のスポーツ選手に限ったことではない。

他の分野の成功者より危うい場所に

桃田も田児も違法行為であるという認識はあったという。だから余計に罪は重いわけだが、結局は自分の立場を勘違いした、誘惑に流されてしまう弱い人間だったということだ。この勘違いはスポーツ選手に限らず、政治家や官僚、有名タレントら世間から注目されたり、社会への影響力を持ったりする「勝ち組」に必ず仕掛けられるワナだと思う。

ただ、その意味でスポーツ選手が他の分野の成功者よりも危うい場所にいるのは確かだ。スポーツの勝者を無条件に称賛する、結果さえ出せばすべてが許されると思わせる風潮が、選手の周囲だけでなく社会全体にある。昨年のスーパーシリーズ・ファイナルで優勝して賞金8万ドルを手にした桃田は「派手な生活をしたい。それに"ガキんちょ"が憧れてバドミントンを頑張るように」などと話している。やんちゃな自分を自慢する調子に乗った幼稚な姿。大人なら眉をひそめそうなこんな発言が、新しいヒーローの自由奔放な魅力として肯定的に報道されている。

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