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所有者不明の土地にどう対応?専門家に聞く

相続時の未登記などで発生する所有者不明の土地の拡大にどう対応していくかは、人口減少時代を迎えた日本の今後を考える上で避けては通れないテーマだ。国土交通省の検討会の委員長として3月に対応方策をまとめた早稲田大学の山野目章夫教授と、同じく3月に全国の自治体へのアンケート結果を公表した東京財団の吉原祥子研究員に話を聞いた。(聞き手は本田幸久)

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早稲田大学大学院法務研究科・山野目章夫教授の話

国交省の専門家検討会が3月にとりまとめた対応方策は、法改正の不要な範囲でできることを列挙したもの。内容的には所有者把握のためのガイドライン作りや登記促進の働きかけといった対策を盛り込んでいる。ただ、これで十分だとは考えていない。今後は法改正も視野に入れた対応が必要だろう。

早稲田大学の山野目章夫教授

現行法でも、ある人がいなくなった場合に管理人をたてて、その不明者の財産を包括的に管理する「不在者財産管理制度」はある。しかし「人」を単位にした制度なので、利用する場合には不明者の土地だけでなく預金や株式など財産すべてを調べる建前があるし、申し立てができるのも利害関係人などに限られる。この現行制度に加えて、問題になりそうな土地だけを対象に、利害関係がない市町村などでもスポット的に公的管理に移すことを申し立てられる「モノ」単位の制度を創設すべきだ。

今は任意になっている相続登記を強制にすべきだという議論もあるが、私はその効果に懐疑的だ。相続登記を強制にしたところで罰則が10万~20万円程度の過料ならば登記にかかるコストのほうが高いことがあり実効性がない。違反した場合の摘発も膨大な手間がかかる。

むしろ登記制度の改善点はほかのところにある。死亡届は市町村、相続登記は法務局に切り離されて管理されているので、双方の連絡が取れていない。このため法務局では土地の持ち主が生きているのか死んでいるのか把握できない。双方の情報をIT(情報技術)でつなぎ、市役所に死亡届が出された段階で法務局などから相続登記を促していけば、問題の解決には役立つのではないか。

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東京財団の吉原祥子研究員の話

土地の所有者不明の問題は、不利益が目に見えにくいことが対策の遅れにつながっている。空き家なら倒壊しかかって危険が生じたり、景観に悪影響を与えたりして不利益が顕在化するので撤去への合意がとりやすい。土地の場合は平時にはこうした不利益が現れないので、徐々に荒廃して荒れ地になっていくのを傍観する状況になっている。

東京財団の吉原祥子研究員

しかし再開発や災害からの復興、耕作放棄地の解消など、地域社会が何か新しいことに踏み出そうとしたときには妨げとなる。これは地域の活力をそぐ問題だ。全国で同じようなことが繰り返され、国力の低下につながる。

短期的な対策としては、まず所有者、自治体双方にとっての各種手続きのコストを下げる必要がある。たとえば相続人による相続登記や、自治体による財産管理制度の利用にあたり、費用負担を軽減し手続きの促進を支援していくことなどだ。

長期的には行き場のない土地を寄付として受け取り、管理する中間組織の創設や、公的な利用が見込めるものについては行政による公有化も考えざるを得ないのではないか。

教育の問題も重要だ。学校教育では現行の土地制度について学ぶ機会がない。土地が個人の財産であるとともに公共性の高い存在であり、次の世代にどう継承していくのか、普段から国民が学ぶ機会をつくっていくべきだ。

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