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ブラジル苦戦、問われる底力 W杯南米予選

サッカージャーナリスト 沢田啓明

昨年10月に始まったサッカーの2018年ワールドカップ(W杯)南米予選は世界で唯一、全参加国(南米は10)がホームアンドアウェー方式の総当たりで対戦し、おおむね数カ月に1度、2節ずつを消化している。3月下旬に第5、第6節が行われ、順位が大きく変動した。

伏兵エクアドル、2位に後退

前節まで4勝1分けで首位を快走していた伏兵エクアドルは、FWカイセード(エスパニョール)、MFバレンシア(マンチェスター・ユナイテッド)らが厳しくマークされて特長であるカウンターを封じられ、ホームでパラグアイと引き分け、アウェーでコロンビアに完敗を喫して2位へ後退した。

それまで2位だったウルグアイは、14年W杯イタリア戦でCBキエリーニの左肩にかみついて代表公式戦9試合出場停止の厳罰を受けたスアレス(バルセロナ)が1年9カ月ぶりに復帰し、敵地でのブラジル戦に臨んだ。この試合は、バルセロナでチームメイトである親友ネイマール(バルセロナ)との"対決"としても注目を集めた。 

試合前の時点で3位で、この試合に勝てば2位に浮上するブラジルは前半、ネイマール、ウィリアン(チェルシー)ら前線の4人が頻繁にポジションを入れ替えて相手守備陣を混乱に陥れ、ドグラス・コスタ(バイエルン・ミュンヘン)とレナト・アウグスト(北京国安)の得点で71分までに2点リードした。

しかし、ここから試合内容が一変する。ウルグアイがブラジルのサイド攻撃を封じると同時に、大きく展開してブラジル守備陣を揺さぶってペースを握る。FWカバーニ(パリ・サンジェルマン)が左足で強烈に蹴り込んで反撃ののろしを上げると、後半開始早々、スアレスがスルーパスに鋭く反応し、追走するCBダビドルイス(パリ・サンジェルマン)を振り切って同点。その後もブラジルを攻守に圧倒し続けた。

スター対決、スアレスに軍配

ブラジルは後半に入ってから運動量が激減し、ネイマールが前線で孤立。得点はおろか決定機を作ることすらできなかった。バルセロナの2人のスターの対決は、スアレスに軍配が上がった。

それから5日後、ウルグアイはホームにペルーを迎え、スアレスからのパスを受けたカバーニの決勝点で勝ち点3を確保。勝ち点13でエクアドルと並び、得失点差で勝って首位に躍り出た。

人口(約340万人)が横浜市より少ないこの小国は、決して選手層が厚いわけではないが、高く強く激しい守備をベースに、高度な個人能力を生かした鋭いカウンターで超大国とも互角に渡り合う。「世界サッカーの奇跡」と呼べる特異な存在だ。

一方、ブラジルはウルグアイ戦でネイマールとダビドルイスがイエローカードをもらい、続くアウェーのパラグアイ戦に累積警告で欠場。2人の代役として、CFリカルド・オリベイラ(サントス)とCBジウ(山東魯能)が先発した。しかし、ボールポゼッションでは上回りながらパラグアイの堅守を崩せなかった。逆にサイド突破を許してピンチを招き、2点を先行されてしまう。それでも、79分、途中出場のFWフッキ(ゼニト)が強烈なミドルシュートを放ち、GKが弾いたところをリカルド・オリベイラが押し込む。さらに、追加タイムに入ってから右SBダニエル・アウべス(バルセロナ)がドリブルで中へ切れ込み、利き足ではない左足でファーサイドに流し込んで辛うじて追いついた。しかし、この2節で得た勝ち点はわずか2で、3位から6位へ順位を落とした。南米からのW杯出場枠は4.5だから、このままなら史上初の予選落ちという屈辱を味わうことになる。

国内に「ドゥンガ監督を解任」の声

国内では「ドゥンガ監督を解任してコリンチャンスのチッチ監督を招くべきだ」という声が圧倒的だ。ウルグアイ戦で2点のリードを追いつかれた際、ドゥンガ監督は戦術変更と選手交代で局面を打開できなかった。選手たちも、自信を失っているようにみえる。チッチ監督は緻密な戦術家で、昨年のブラジル全国リーグで圧倒的な強さを発揮して優勝しており、監督としての実績はドゥンガ監督をしのぐ。個人的には、監督交代を断行すべきだと考えている。

この2節で勝ち点6を稼いで順位を大きく上げたのが、アルゼンチンとコロンビアだ。

アルゼンチンは、第4節までメッシ(バルセロナ)が故障で欠場していたせいもあり苦戦していたが、第5節からエースが復帰。アウェーで強豪チリと対戦したが、抜群の個人技を持つこの選手には複数のマーカーを付けざるをえず、必然的にFWアグエロ(マンチェスター・シティー)、MFディマリア(パリ・サンジェルマン)らのマークが甘くなる。チリが先制したが、アルゼンチンがディマリアの右足シュートで追いつき、ゴール前でメッシのパスを受けた右SBメルカード(リバープレート)が美しいジャンプボレーシュートをたたき込んで逆転。チリの反撃を抑えて快勝した。

メッシ復帰、アルゼンチン3位上昇

第6節ではホームに下位のボリビアを迎え、メルカードとメッシの得点で完勝。順位を6位から3位まで引き上げた。

この2節でのアルゼンチンの収穫は、メッシの復帰によって得点力が飛躍的に向上したことに加え、これまで試合のたびに選手を入れ替えていた右SBにメルカードという適材を得たこと。運動量が豊富で、堅実に守備をこなすのみならず、機を見て相手ゴール前まで駆け上がる。この2節で2得点を挙げる活躍だった。

ボランチのマスチェラーノを中心とする守備陣は安定しており、攻撃力は世界トップクラス。今後、さらに順位を上げてゆくはずだ。

7位まで勝ち点4差の間にひしめく

一方、チリは14年W杯でベスト16に食い込み、昨年の自国開催の南米選手権(コパ・アメリカ)で優勝と見事な結果を残していたサンパオリ監督がサッカー協会首脳と意見の食い違いから今年1月に辞任。後任のピッジ氏は当面、前監督の戦術を踏襲するようだが、アルゼンチンに完敗。それでも、次節でアウェーでベネズエラに大勝して持ち直したのは大きい。

コロンビアもMFハメス・ロドリゲス(レアル・マドリード)が決定的なパスを連発し、攻撃陣が爆発。アウェーでボリビアを3-2で下し、ホームでエクアドルにFWバッカ(ミラン)の2得点などで3-1と快勝。順位を5位まで上げた。

第6節を終えて、7位までが勝ち点4差の間にひしめく混戦となっている。

サッカー超大国のアルゼンチン、ブラジルといえども楽に勝たせてもらえないことが、この地域のレベルの高さを物語る。それでも、この2節でアルゼンチンは上昇機運に乗った。一方、ブラジルは非常に苦しい。14年W杯準決勝のドイツ戦で大敗した「1-7ショック」の後遺症が見て取れる。この難局をどう乗り越えるか。「サッカー王国」の底力が問われている。

次節は9月、まだまだ波乱の予感

南米予選の次の試合は9月に行われ、やはり2節を消化する。最大の注目カードは、アルゼンチン対ウルグアイのラプラタ・ダービーで、バルセロナの僚友であるメッシとスアレスが対決する。ブラジルはホームに好調エクアドルを迎え、アウェーで苦手コロンビアと対戦する。

まだまだ波乱がありそうだ。

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