市民のオーナーシップ発揮が日本を変える

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2016/4/5 6:30
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2014年にJリーグチェアマンに就任する前の3年間はリクルートグループの香港法人であるRFG Hong Kong Limitedの社長を務めていた。アジアの中華経済圏には2月の旧正月に「レッドポケット」(紅包)という、いわゆる「お年玉」の習慣がある。

海外で名誉な「寄付する権利」

G大阪が今季から本拠地にする市立吹田スタジアムは建設費の多くを寄付金で賄った=共同

G大阪が今季から本拠地にする市立吹田スタジアムは建設費の多くを寄付金で賄った=共同

上司は部下に、年長者は年下の者に1000円ほど配る。社長の私は全社員に渡さなければならなかったので、旧正月の前は銀行に駆け込んだものだ。

英国領だった香港には欧米と同様、寄付の文化がある。100キロトレイルランニングの大会の完走者に「寄付する権利」を与えるというのがあった。寄付の権利を手にするのがそれだけ名誉なことなのだろう。

金を持つ者は人に分け与えるのが当たり前で、利益が目に見える形で再配分されている。社長が社員と食事に行き、割り勘にしたら一気に信用を失う社会だ。

リクルートで留学生の採用をしているときにハーバード大学などを訪れ、米国の大学には民間からの寄付講座がたくさんあることを知った。それも利益の再配分の一つだ。

日本はどうかというと、累進課税という形で利益が再配分されていると解釈できる。しかし、徴収された税金が何のために使われているかがわからないので、自分が社会のために役立っているという実感がわきにくい。

それはともかく、日本では公共物はお上がつくる、お上に与えられるのが当たり前。寄付の文化が育まれずにきたのはそのためかもしれない。

しかし、ここへきて日本も変わってきたのではないかという感じがする。G大阪が今季から本拠地にしている市立吹田スタジアムの建設費140億円のうち、105億円は法人・個人からの寄付金で賄った。

使途明確なら社会のために寄付

これを私は「オーナーシップの目覚め」と解釈している。公共物を行政につくってもらうのではなく、市民がオーナーシップを発揮し、自分たちの社会は自分たちでつくり上げる。その機運を感じる。

鎌倉で観光案内の標識を新設するのに、クラウドファンディングで1口1万円の寄付を募ったら、あっという間に目標の100万円が集まったという。案内板に寄付者の名前が刻まれるのが大きかったのかもしれないが、使途目的が明確ならば社会のために寄付をする人が増えてきた。

広島のサッカー専用スタジアム新設を巡る議論が注目されている。建設地の選定作業を進めている広島県、広島市、広島商工会議所の3者が広島みなと公園を優位とする中、主たる使用者となるサンフレッチェ広島の久保允誉会長が先月、旧広島市民球場跡地に行政に頼らない形で建設する対案を発表した。

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