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FC今治、JFL昇格へ正念場のシーズンが始まる

FC今治のオーナーになって2年目の今年は私にとってもクラブにとっても正念場のシーズンになる。4月3日には四国リーグがいよいよ始まる。昨シーズンは逃したJFL(日本フットボールリーグ)昇格を今シーズンは絶対に果たすつもりでいる。

現場寄りのポジション、CMOに就任

新体制発表には愛媛出身の白濱亜嵐さん(左)もかけつけた

昇格を期した今季、私は昨季までと違った立場でトップチームに関わることになった。次の株主総会で社長を退いて代表権を持った会長になる一方、チーフ・メソッド・オフィサー(CMO)という現場寄りのポジションに就いて、トップのチームづくりや選手育成、強化、普及の柱となる「岡田メソッド」の完成に、より傾注できる態勢を整える。

昨年は、きちんとした就業規則もないような会社で皆が一生懸命に働いてくれた。近隣の幼稚園を対象にした巡回指導は好評を博し、U-12(12歳以下)のチームは愛媛代表として年末の全日本少年サッカーに出場する快挙を成し遂げてくれた。おかげで今年のセレクションには大勢の子供たちが集まってくれた。

それだけにトップチームが昨年11月の全国地域リーグ決勝大会を勝ち抜けず、JFL昇格を逃したのは余計に悔しかった。いくら立派な理想を掲げても成果が上がらない仕事からは人は離れていく。特にトップチームはクラブの顔だけに影響力は大きい。自分に対する信用で何とか持たせるのも限界があり、ニュースバリューが落ちて賞味期限が切れたような状況になり、資金が集まらなくなったらクラブは立ちゆかなくなる。そういうサイクルにはまらないためのCMO就任と受け取ってもらってかまわない。

もともと、フル操業だった社長業1年目を終え、このままでは身が持たないと思っていた。オーバーペースで自滅するマラソンランナーというか。来月の給料が払えるかどうか心配で必死な自分と比べてフロントのスタッフには危機感が足りないように思え、何でもかんでも仕事を引き受けて限界ぎりぎりのところまで自分を追い込む羽目に陥っていた。これでは自分もパンクするしフロントも育たない。

スタッフに仕事任せ、危機感共有

今年はやり方を変えることにした。今治に夢や希望を持って集まってくれたスタッフには優秀な人材が多いから、仕事を任せて責任を持たせれば危機感を共有できるはずだと私なりに反省したのだ。丸投げにする気はないけれど、任せるところは任せる、すべてを私に仰ごうとしない。私が不在のときでも仕事が回るクラブにするために新しい方向に歩を進めることにしたのだ。

バランスシートや損益計算書を読み解きながらクラブ経営の舵(かじ)を取る喜びを昨年は発見したが、友人たちに「いっぱしの経営者になったつもりで気取ったことを口にする岡田に魅力を感じない。もっとリスクを負ってチャレンジしろよ」と忠告された。そういうことに背中を押された部分もある。クラブ経営は次の株主総会で新社長になる人間にある程度任せ、空いた時間やエネルギーを自分は何に注ぎ込むかとなったとき、トップのチームづくり、メソッドづくりの現場にさらにコミットすることだった。

3月27日付で日本サッカー協会の副会長に就任したのもFC今治でのそんな私の立ち位置の変化と関係がある。昨年までのようにあらゆる仕事に自分がタッチする状況だったら副会長就任は絶対に無理だった。日本協会の仕事は月に2回ほど常務理事会などの重要な会議に出ればいいだけだから今治での仕事に差し障りはないと判断した。

高知ユナイテッドSC、手ごわい相手

FC今治のJFL昇格へ不退転の覚悟で臨む

自分としては「もう今治の仕事はどうでもよくなったのか」と思われるなら副会長の役目はお断りした方がいいと思ったが、逆に市長をはじめ今治の人たちに「それは引き受けた方がいい」といわれ、田嶋幸三・日本サッカー協会新会長のサポートをすることにした。

3日の四国リーグ開幕の相手は高知の中村クラブだ。昨季2位の高知Uトラスタ-FCのトップチームと昨季3位のアイゴッソ高知が今季は合併して高知ユナイテッドSCとなって我々の前に立ちはだかる。向こうも高知初のJクラブを誕生させようと本腰を入れてきた。元ヤンマーの選手だった監督の西村昭宏とは日本代表時代に同じ釜のメシを食べた間柄だ。手ごわい相手になる。

9月25日の最終節まで1試合たりとも気の抜けない戦いになるが、四国リーグを圧倒して勝つチームにできないようでは昨季同様、タフな全国大会でつまずくことになる。たくましいチームにするために今季は四国以外にも強い相手を求めて、試合ができる環境をつくってやろうと思っている。

新監督の吉武博文はU-17(17歳以下)日本代表の監督としてワールドカップ(W杯)でベスト8まで勝ち進んだ実力の持ち主。スタッフの数も増やし、今季は矢野克志コーチ、マネジャー兼分析担当の古賀康彦、GKコーチの工藤直人、トレーナーの天崎亮太の4人が新監督を支える。指揮命令系統も明確にした。私はそんな彼らの相談に乗る立場。今治にいるときはミーティングにも必ず出るつもりでいる。

最高のチームづくりへ互いに補い合う

最終的にCMOに落ち着いたが、最初はどんな肩書にするか少し悩んだ。「総監督」では自分に決定権があるように誤解される。あくまでも現場の決定権は吉武監督にある。吉武は「岡田さんはメンター(助言者)みたいなもんですかね」といい、それでいこうと思ったが、スポンサー企業の前で「今季からメンターになります」と話したら場がしーんとなった。これは受けないと思い、CMOという名称を考えだした。

どんな呼び方であれ、オーナーでもある私が現場近くにいるのは「吉武監督がやりにくいのでは」とよく聞かれる。吉武には吉武の、私には私のコーチとしての哲学や信条がある。持っているものも足りないものも違う2人が、互いに足し合ったり補い合ったりしながら最高のチームをつくろうと2人でいつも話している。

昨年から吉武と私は今治では同じ家に住み、吉武が疲れているときは私が朝のゴミ出しをするなど、夫婦同然の暮らしをしている。周りは心配するけれど、私は面白いことができそうな予感がある。

選手は28人中12人が昨季からのメンバーで16人が新加入だ。これだけ激しく入れ替えたのは、このレベルの選手に一番足りない野心を奮い起こすためだ。現状に満足というか、「わずかでもお金をもらってサッカーをやらせてもらえるだけでもありがたい」という純粋な気持ちの選手が多い。それはそれで尊いことだが、Jリーグを目指すとなったら「このどん底からはい上がる」「ここからプロになる」という性根がないと難しい。そのための血の入れ替えだった。

Jリーグへ羽ばたくための土台づくり

今治の町を見下ろす高台にJFL、J3の参加基準を満たす新スタジアムをつくることになった。今年5月ごろに着工、17年夏には完成する予定だ。2月23日にはJリーグから「100年構想クラブ」に認定され、Jリーグ入会に向けた第一歩を踏み出せた。地元のスポンサーが着実に増えているのもありがたい。スポンサーの数自体も昨年の60社から107社に増えた。地元での認知度は上がり、市議会や市役所の反応も良い方向に変わってきた。

そういう流れをさらに加速させるためにも不退転の覚悟でトップチームをJFLに昇格させたい。Jリーグに向けて羽ばたいていくための、本物の力を身につけ、土台をつくる大切な1年になる。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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