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「競争は嫌い」出社は週3日、前沢流の粋な働き方

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏が語る(上)

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイ社長の前沢友作氏。バンド活動をしながら、同社を創業。アパレル市場が伸び悩む中、業績は好調だ。独自の経営哲学を持つ前沢氏はいつ仕事に目覚めたのか。

>>前沢氏が語る(下) 働くなんて「余暇活動」でいい ボーナスは同じ

スタートトゥデイには僕の机もなければ、パソコンもありません。社長室はありますが、打ち合わせや、たまに疲れた時に仮眠をとるのに使うくらい。じつは、僕、メールアドレスも持っていないんです。

出社するのは週3日だけ。それも、会議のためだけに来ています。「社員やその家族を養うために頑張ろう」なんて、考えたことはありません。そんなことを僕が思った瞬間、何かがウソになる。

1部上場企業になりましたが、大事にしていることは、それ以前と何も変わりません。好きなことを、ただひたすら楽しみながらやる。それがいつの間にかビジネスになっていたんです。

もしも、僕がヘンに気負い始めたら、社員はこう言うでしょう。

「社長、そんなことはいいから、面白いことだけ考えてくださいよ」って。

クワガタを捕りに5駅先へ

生まれたのは千葉県鎌ケ谷市です。父はサラリーマンで、母は専業主婦。ごく普通の家庭です。父はクラシック音楽が大好きで、音楽は子どもの頃から、いつも身近にありました。コンサートにもよく、連れて行ってもらった記憶があります。

僕自身は、子どもの頃から凝り性でした。凝ると、なんでも集めたくなる。小学生の時はクワガタ集めに凝っていました。近所に、毎朝、たき火をしているおじいちゃんがいて、ある日、そのおじいちゃんから、5駅先の森にたくさんクワガタがいることを教えてもらい、電車に乗って捕まえに行くようになりました。

持ち帰ったクワガタを家の裏で繁殖させて、同級生に売ったりもしていました。それで「お菓子を買おう」とか思ったわけじゃないんです。売ったお金を電車賃に充てて、また、5駅先の森へ捕りに行く。要するに、「オタク」です。

その頃から、人と競争するのは大嫌いでした。運動会のかけっこも、小学校の3、4年くらいからは真面目に走らなくなっちゃった。順位を付けられるのがバカバカしかったし、周りの大人が結果に一喜一憂しているのを見るのも、嫌でした。

塾にも通っていましたが、今から振り返ると、あれは一種の親孝行だったかもしれない。親が喜ぶから行っていただけのことで、大学に入りたいとか、将来、何になりたいか、なんて考えたこともありませんでした。

 中学3年生でバンド活動を始める

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏

地元の友だちとバンドを組んだのは、中学3年生の時です。最初はギターを弾いていましたが、ドラムを叩けるメンバーがいなくて、僕がやることになりました。人と同じが嫌いで、洋楽、それもハードロックやハードコアパンクにハマっていました。

好きだったのは、ニューヨークの「ゴリラ・ビスケッツ」というバンド。「スタートトゥデイ」という社名も、じつは、彼らの曲のタイトルから取っています。

勉強は好きでも熱心でもなかったですけれど、親に勧められて、高校は早稲田実業を受験して合格しました。入学式の日、僕はなぜか、ニューバランスの赤いスニーカーを履いて学校に行ったんです。周りはみんな、黒いローファーを履いているのに。

学ランに赤いスニーカーって、ファッション的にはちょっとバランスが悪いんですけれど、思えば、あれが僕にとってのささやかな「抵抗」の始まりでした。

制服があるのに高校は私服で通っていましたし、あえて違うクラスに出席したりもしていました。特別に「ワル」というわけではなかったですけれど、そういう意味では、ちょっと"特殊な子"だったかもしれません。

 サラリーマンにはなりたくないと思った

自宅から高校までは、ドア・ツー・ドアで約1時間半かかります。電車の中でヘッドホンステレオで音楽を聴きながら、いつも、こんな風に思っていました。

「こんな暗い顔をしたサラリーマンには、絶対になりたくない」

電車に揺られている大人たちの表情を見ていたら、どうにもこうにも切なくなってしまったんです。

高校2年生になる頃には、勉強する気もすっかり失せていました。授業をサボって建築関係のアルバイトをし、そのお金でスタジオを借りて、バンドの練習をしていました。バンドって、いろんな音が重なり合って一つの音楽が奏でられるじゃないですか。それが楽しかったんですよね。

進学校でしたから、周りは当然、大学受験を目指して一生懸命に勉強しています。高校2年生にもなれば内申書も意識し始める。「前沢とつるむと内申点が悪くなるぞ」という友だちとは疎遠になりましたし、両親も途中からは「大学はもういい。卒業さえしてくれれば、それでいいから」と言っていました。

とにかく、みんなと同じレールに乗って生きていくのが嫌でしかたがなかったんです。その先には、無限の競争が待っているような気がしてならなかった。

競争することに何の意義も感じられなかったし、自分の存在意義がどんどん薄れていくような気がして、たまらなく嫌でした。

 メジャーデビューするも「何か違う」

高校を卒業してからもバンド活動は好きで続けていましたが、「プロになろう」と思っていたわけではありません。ライブハウスで演奏していたら、レコード会社からたまたま声がかかり、「じゃあ、やってみようか」ということになった。

最初はインディーズのレコード会社から、4曲入りのセブンインチ(シングルレコード)を出しました。運良く、それが数千枚売れた。結局、それが僕らのファーストシングルCDになり、最終的には数万枚売れたんですが、メジャーデビューしたあたりから、「何かが違うな」と感じ始めていました。

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏

ただ、音楽が好きで始めたバンド活動。なのに、メジャーデビューしたとたん、決められたタイミングで、決められた曲数のアルバムを出さなきゃいけなくなる。アルバムを出したら出したで、全国ツアーへ。気がついたら、いつも、同じメンバーと行動を共にしていました。

「これじゃサラリーマンとちっとも変わらないじゃないか」

そう思った瞬間、バンド活動に飽きはじめたんです。

じつは、その頃、音楽活動と掛け持ちで、自分が好きで海外から買い付けた洋楽のCDやレコードを通信販売していました。だんだんと、そっちの方がおもしろくなってきた。

結局、それが今の「ゾゾタウン」へとつながっていくわけです。

前沢友作氏
1975年生まれ、千葉県出身。早稲田実業学校卒。音楽活動を経て1998年に有限会社スタート・トゥデイ設立(2000年に株式会社化)、04年にファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」開始。07年に東証マザーズに上場、12年に東証第1部に上場。13年にファッションコーディネートアプリ「WEAR」開始。

(ライター 曲沼美恵)

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