2019年8月24日(土)

重力波のもとは「初代星」 ブラックホール連星の謎

2016/3/26 6:30
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日経サイエンス

アインシュタインの予言から1世紀を経てようやく重力波が直接観測されたことは、世界的な大ニュースとなった。この発見で、研究者に大きな驚きを与えたのは、その重力波を生んだ源だった。発生源として有力視されているのは、宇宙誕生から数億年後に登場した第1世代の星「初代星」を起源とするブラックホール連星だ。

■専門家にとって3つの予想外

合体する直前のブラックホール連星のイメージ(画像提供:the Simulating eXtreme Spacetimes [SXS] project[http://www.black-holes.org])

合体する直前のブラックホール連星のイメージ(画像提供:the Simulating eXtreme Spacetimes [SXS] project[http://www.black-holes.org])

世界で最初に捉えられる重力波は、すでに存在が確認されている天体、具体的には超高密度の天体である中性子星2つからなる中性子星連星が合体する際に生じたものだと、ほとんどの研究者は予想していた。しかし、実際に観測されたのは、2つのブラックホールからなるブラックホール連星の合体で生じた重力波だった。

ブラックホールは一般相対性理論で予言され、様々な天文観測で間接的に存在が確認されているが、決定的証拠は得られていなかった。また星の進化の研究からブラックホール連星の存在も予想はされていたが、その存在を裏付ける観測事実はなかった。

それが今回の重力波の発見で、ブラックホールの存在が確証されたばかりか、ブラックホール連星の存在も裏付けられた。しかも、その連星が合体してより大質量のブラックホールが形成される現場をも捉えることができた。

ブラックホールの質量は太陽の質量を単位として表される。今回の重力波発生源となった連星の一方のブラックホールは36太陽質量で、他方が29太陽質量だ。多くの研究者はこの質量の値にも驚いた。

これまでの天文観測と理論研究から、太陽よりも重い星が超新星爆発を起こしてできるブラックホールの存在が確実視されているが、そのブラックホールの質量は重くとも10太陽質量程度と考えられている。一方、天の川銀河や数多くの銀河の中心には数百万~数十億太陽質量にも達する巨大ブラックホールが存在することも確実視されている。

裏返していうと10~100万太陽質量のブラックホールの存在は確認されておらず、いわばブラックホールの空白地帯となっていた。その空白地帯に今回、30太陽質量前後の2つのブラックホールが連星という形で同時に見つかったわけで、星の進化の研究に大きなインパクトを与える発見だ。

こうした質量のブラックホールの起源として、宇宙が進化する過程で登場した特別な星、「初代星」が起源ではないかとする説がある。初代星とは宇宙誕生から数億年後に登場した第1世代の星だ。星の形成プロセスを考えると、初代星は、その後の時代に誕生した星々よりもはるかに重かった可能性が高い。

本当に初代星を起源とするブラックホール連星だったのか、今後、重力波を出す天体がいくつも発見されるようになれば、その答えが出るだろう。

(詳細は3月25日発売の日経サイエンス2016年5月号に掲載)

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