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介護に追われる若者たち 「ヤングケアラー」の孤独

家族と介護(上)

 介護を取り巻く状況が厳しさを増している。日常生活で支えが必要な人は600万人に達する。政府が「離職ゼロ」を訴え、家族の責任をめぐる裁判が社会的な注目を集める時代。介護はもはや限られた人々だけの問題ではない。家庭における介護のいまを見つめた。

「これ以上、両立は難しい」「家族って何だろう」。日記を繰ると、誰にも言えなかった思いがよみがえる。埼玉県内に住む女性(23)は大学卒業までの約2年、祖父母の介護を母親と担った。

2人との同居は中学時代から。やがて認知症の祖母に、不可解な言動が現れ始めた。家族の誰が介護するか。父と姉は仕事がある。母もパート勤め。学生の自分がデイサービスの送り出しや家事を手伝い、毎日深夜のトイレに付き添った。

学業や就職に影落とす

目標の海外留学は断念せざるを得なかった。友人の遊びの誘いも断った。ある日、病院の付き添いで講義の欠席を大学に相談した。「あなたの将来とどっちが大事なの?」。答えなどあるはずないじゃないか――。

介護をしやすいよう地元の保育所に就職するのと前後して、祖父母とも亡くなった。2人への感謝は変わらないし、介護の経験は仕事にも生きている。ただ「あの頃は本当に孤独だった」。

総務省の2012年調査によると、家族を介護する15~29歳は約17万7千人。若者介護を研究する立正大の森田久美子准教授は「家族の規模が小さくなり、少子化や晩婚化でさらに増えるだろう」とみる。

介護は若者の人生や生活にも影を落としかねない。学校を中退する。就職をあきらめる。ただ実態はよく分かっていない。本人にとっては重い負担も、周囲からは「お手伝い」と見られがちだ。同年代に相談できず、孤立しやすい。18歳未満の「ヤングケアラー」となると、SOSは一層見えにくい。

ひとり親家庭で育った少女(18)。母は心の病を抱え、小学生の頃から病院の付き添いや家事を担ってきた。周囲との環境の違いに気付き、中学には行かなくなった。「誰かに話を聞いてほしい」。孤独を感じていた。

経済的に困窮する子供らを支援するNPO関係者に出会い、少しずつ思いを話せるようになった。今はファッション系の学校への進学を目指してアルバイトを掛け持ちする。母のために、東京まで片道2時間半を通うつもりだ。

介護者を支援する日本ケアラー連盟が昨年、新潟県南魚沼市で市立小中学校など26校の教職員にアンケートしたところ、回答した271人の25%がヤングケアラーの可能性がある児童生徒に関わった経験があった。

母親やきょうだいの世話のほか、祖父母の入浴やトイレの介助に関わる子も。欠席や遅刻など学校生活への影響も見られた。市教育委員会は「家族をケアする子供という視点はなかった」と話す。

連盟のメンバーでもある森田准教授は「行政や学校、医療福祉の現場が意識し、情報を共有して支援の方法を探ってほしい」と話す。連盟は英国での事例を参考に、家族にかかる負担の大きさを客観的に測る指標をつくる検討を始めた。

悩み「だれかに聞いてほしい」

若い介護者が本音で話せる場も欠かせない。横浜市内のカフェでは月1回、20、30代で介護を経験した若者らが集う。交流サイト(SNS)でも悩みや体験を共有する。

呼びかけ人の高橋瑞紀さん(35)は11年から1年半、祖母の在宅介護を母と担った。地域の介護者の集まりは年上ばかり。恋愛や結婚、就職……。若者ならではの悩みもある。「知人には話せない。でもどこかで仲間を探していた」と高橋さん。「介護は終わりが見えない。誰かに背中をさすってほしい」

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