津波の姿を20分早く、汚名返上へ東北沖で海底観測
科学の試練

2016/3/11 3:30
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東日本大震災は世界最高といわれた地震研究や津波警報の課題を浮き彫りにした。「想定外」の巨大地震に太刀打ちできず被害を拡大させた。信頼回復のための取り組みの柱として進むのが海底観測網の整備だ。津波や地震をいち早くとらえて正確に予測し、迅速な避難に役立てる。

宮城沖で船から津波を観測する装置を沈める(2015年4月27日、防災科学技術研究所提供)

宮城沖で船から津波を観測する装置を沈める(2015年4月27日、防災科学技術研究所提供)

北海道釧路沖から千葉県房総沖の海底で、総延長5700キロメートルの長大な観測網の整備が進んでいる。光ケーブルと一体化した観測装置を海底150カ所に設置する。国立研究開発法人・防災科学技術研究所の「日本海溝海底地震津波観測網(S-net)」だ。約320億円を投じる。

装置は直径34センチメートル、長さ226センチメートルの円筒形で津波による水圧の変化や地震の揺れをとらえる。100~200キロメートル沖合の震源に近い海底に観測網を整備することで、今より20分早く津波を検知でき、地震速報は30秒早く出せるという。

計画を指揮する金沢敏彦室長は「世界に例のない観測網。精度の高い津波情報を伝えられるようにしたい」と話す。年内に運用を始め、データは気象庁にも送られる。

大震災では、想定を超える規模の地震が発生し、それに伴う大津波によって多くの命が失われた。浮き彫りになったのが気象庁が出す津波警報の問題だ。「我々の技術力が十分及ばなかったということを痛感し、大変申し訳なく思っている」。2012年2月、気象庁長官だった羽鳥光彦氏は国会で陳謝した。

気象庁は地震の規模と震源の位置から10万通りのデータと照合。津波の高さと到達時間を推定、地震発生から3分をメドに最初の警報を出す。

気象庁の津波予想を伝える震災直後のニュース映像。実際の津波は「予想される高さ」を大幅に上回った=TBSテレビ提供

気象庁の津波予想を伝える震災直後のニュース映像。実際の津波は「予想される高さ」を大幅に上回った=TBSテレビ提供

大震災では発生から3分過ぎても揺れが続いた。これでは地震の正確な規模は出せないが、速報は急がなければならない。手順書に従ってマグニチュード(M)7.9と計算し、宮城県で高さ6メートル、岩手・福島両県で3メートルと警報を出した。ところが結果は過小評価だった。約30分後に引き上げたが、第1波がすでに沿岸に迫っていた。

M8を超す地震では陸上にある地震計の多くが振り切れ、正確に計算できない。これは想定外だった。「できることはやったが、歯が立たなかった」と担当者は話す。

気象庁は13年、M8以上の地震が予測される場合、最初の警報では津波の高さを「巨大」「高い」という表現に改めた。しかし、詳細な情報への要望は強い。S-netのデータを反映してより正確な津波の高さに修正できるように、システムの開発を進めている。

地震は複雑な自然現象だ。日本地震学会は震災後に「現状では予知は困難」との見解を出した。文部科学省は14年、全国の研究機関が進める「地震予知研究計画」の名称を「地震火山観測研究計画」に変え、地震予知の看板を下ろした。

予知が困難な以上、観測網で地震や津波をいち早くとらえる。その重要性はさらに増す。

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