/

如水会 三田会 稲門会……就活にどれだけ有利?

 初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の様々な疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。

今回の質問は「OB・OG訪問は、やはり有名大学の方が有利なのでしょうか」。

卒業生から、就活ノウハウや社会人生活の生の声を聞くことができるOB・OG訪問は、今も昔も就活の大事なステップだ。だが、当然のように、大学のランクや規模の違いで、有利・不利はある。一部の有名大学はこれまで以上に卒業生と現役の学生がつながりを強め、在校生を手厚くサポートする一方、中堅大学の学生のハンディキャップは大きく、大学側も対策に乗り出している。

部内で「秘密の会社説明会」

卒業生から仕事内容や就職活動などについて話を聞く女子大生(東京都渋谷区の実践女子大)

パスワードを入力し、マウスを数回クリックすると、画面には大手自動車メーカーや総合商社、都市銀行などそうそうたる企業名と社員の名前が表示された。社員名の横には大学の「卒業年」や「メールアドレス」などの連絡先が記載されている。

一橋大学の卒業生組織「如水会」の会員専用のウェブページだ。如水会に加入できるのは、一橋大学の卒業生か、現役の学生に限られる。会員でさえあれば、いつでもどこでも、「Web名簿」が閲覧可能だ。

「サークルやゼミの先輩もいるけれど、如水会の名簿でそれ以上の人脈が開拓できた」。2013年に一橋大学を卒業し、都内で働く20代の男性は如水会名簿を就活に活用した。男性は興味のある業界に絞り3回、如水会経由でOBを訪問。社会人になった後は、自分が得た経験を後輩にも伝えようと、年に1~2回は如水会名簿経由でOB訪問を受けている。

如水会の岡田円治事務局長は「如水会の特色は、卒業生だけでなく、現役の一橋大生も加入できること」と説明する。卒業生組織に学生が加入できるのは珍しい。3月時点の総会員数は3万4000人で、現役学生は2800人。一橋の学部生の数は約4000人なので、7割近くが加入している計算になる。会員登録するOB・OGは年間で6500円程度する会費を支払ってまで登録している分、愛校精神も強く、後輩からのOB・OG訪問に喜んで対応するのだ。

卒業生組織「如水会」は現役学生も加入する(写真は一橋大学の兼松講堂)

同じく、強固な卒業生組織「三田会」で有名なのが慶応義塾大学。三田会には、卒業年次が同じ、いわゆる同期で形成する「年次三田会」や、企業の中の慶大出身者を集めた「○○三田会」などさまざまだが、それらをとりまとめるのが、会員数約37万人の「慶応連合三田会」だ。

さっそく就活でどれぐらい有利なのか取材を申し込んだが、「当会は慶応義塾を卒業しました会員を対象にしたごく内輪の同窓会であり、そのための組織であります」(慶応連合三田会の村田作弥事務局長)と素っ気ない返事。三田会が主体的に学生の就活を支援しているわけではなさそうだ。

早期内定のトリセツ 就活探偵団が突撃取材

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,188円 (税込み)

「三田会は卒業生のための組織」と明言(写真は慶応義塾大学の三田キャンパス)

慶大OBの事情通に聞くと、「慶応の場合、三田会でわざわざ就活生支援をしなくても、サークルやゼミに強固なネットワークがあるんだよ」とのことだ。ある体育会運動部にあたってみた。

球技系のこの運動部に所属する文学部3年の男子学生は昨年12月、4年生の部活引退式で、先輩たちから極秘のA4用紙を渡された。OB・OG訪問に関する流れやルール、注意事項などがまとめられている。学生は「この部に所属する人だけ限定の秘密のOB・OG会があるのをここで初めて知った」という。

3年生は1人1業界を割り当てられ、男子学生は「自動車業界」だった。名簿をつかって大手自動車メーカーのOBに接触すると、快く応じてくれた。卒業生側は、現役生から連絡が来ると、一番年次の若い卒業生が幹事となり、大学の空き教室や企業の応接室を使って「企業説明会」を開く。これがしきたりだ。すでに12月から、企業別に合計で30回ほど開催されたという。男子学生が今週参加した「企業説明会」は大手商社で、入社年次の違う6~7人が集まり、1時間ほど自己紹介をしたり質疑応答をしたあと、「懇談会」で夕飯をおごってもらったという。

男子学生は「3月の広報解禁以降も、わざわざセミナーにいく必要がない。セミナーは良いことしか言わないが、卒業生からは本音が聞ける。これまで異なる業種で20回ぐらい参加した」と満足げだ。

マンモス「稲門会」も動く

早稲田大学も負けていない。OB・OG組織「早稲田大学校友会」の学生とのつながりを強化し始めた。同会は学部やゼミ、業種別の卒業生団体「稲門会(とうもんかい)」約1300を束ねる。会員数は約60万人だ。

結束力を強めようと変わりつつある早稲田大学(写真は早稲田大の大隈講堂)

稲門会は、慶応の三田会をしのぐマンモス組織だが、規模が大きいことや、自由な校風のイメージから結束力には乏しい印象がある。事実、大学のOB・OG、現役の学生から交流の機会が少ないとの指摘が多かった。昨年、校友会として初めて現役学生と若手卒業生が交流する就活イベント「先輩と語ろう」を開催、変わりつつある。

個別の稲門会でもつながりを深めようとする動きがある。09年に立ち上げた同大学の政治経済学部の卒業生限定の「稲門政経会」だ。16年3月時点で会員数は850人にまで成長し、創立以来、学生と卒業生が交流するイベントを年20回程度開いている。

大学入学当時から、同会の学生支部に入る3年生の女子生徒は「活動の中で企画書を見てもらいコメントをもらうという機会があり、社会人相手にも緊張せず話せるようになった」とその魅力を語る。すでに内定を獲得した4年生の女子学生も「高級なお店に連れて行ってもらったりして、社会人になって稼ぐことへの一つのモチベーションになった」と話す。

充実した卒業生の名簿、部活動のネットワーク、OB・OGとの交流イベント――。羨ましくなるような手厚い支援だが、当然ながらすべての学生がこんな恩恵を受けられるわけではない。

大学がセッティング

2月22日の夕刻。法政大学市ケ谷キャンパスの外濠校舎6階に、100人超の法政大の学生が押し寄せた。この日は「OB・OG」座談会の日。法政大学を卒業して、企業で働く現役の社員が、学生たちとざっくばらんに就活の悩みや就職後の働き方などを話す。会場にはヤマトホールディングスやJTB首都圏など16の企業の社員が集まり、母校の学生と話していた。

OB・OG座談会で談笑する就活生(法政大の市ケ谷キャンパス)

同大学のスポーツ健康学部3年生の滝沢真弥(たきざわまや)さんは「これまで自分の関心のなかった企業の話も聞けて、知見が広がりました」と満足そうだった。法政大学キャリアセンター就職支援担当主任の栗山豊太さんも「年々、学生のOB・OGとの交流にかける思いが強くなっている」と自信を見せる。一方で、不満の声もあがる。

「総合商社の人の話が聞きたかったんですけどね」――。この日の座談会に参加した法学部の学生はため息をつく。2日間にわたって開催されたOB・OG会には、35社が出席した。

法政大学の関係者は「昨年はある非財閥系の総合商社のOB・OGが出席する予定でした。でも直前に『忙しくなった』とキャンセルになってしまいました」と悔しがる。学生に人気の高い企業の卒業生層がそれほど多くはないのが悩みだ。キャリアセンターの栗山さんも、「1日目は20社来る予定だったのが、16社になった。1時間前にキャンセルした企業もある」と話す。

テレビ局志望の日本大学の学生は「サークルのOB・OGの目録から探し始めたが、目当てのテレビ局の社員がいない」と肩を落とす。会社に直接連絡をするにも、どこに電話をしたらいいかもわからないし「なんだかハードルが高い」(日大生)。サークルのOBなら気軽に連絡ができると思ったが、難航している。

各大学のキャリアセンターが提供する「OB・OG名簿」も盤石ではない。青山学院大学の3年生の女子生徒は「ゼミやサークルにめぼしい企業のOB・OGがいないので、キャリアセンターの名簿を閲覧したけど使いにくかった」と話す。個人情報保護の観点から、大学のキャリアセンターが提供する名簿は、限られた場所でのみ許可されるケースが多いからだ。

手段選ばず、SNSも活用

では、中堅大学の学生は圧倒的に不利なのか。「そんなことはない」と日本大学の学生支援部就職課の間宮和彦課長は主張する。OB・OG訪問は企業説明会とは違い、社員の生の声を聞ける機会だが、「社会のことを知る機会は至る所にある」(間宮課長)。

間宮課長は、学生が行きたい会社のOB・OGを見つけられないときは、「銀行に行きたいなら、身近にある銀行の支店に『支店訪問させてください』といってみればいい」と学生に勧めるという。学生にはハードルが高いのでは、とも思うが「学生のそういった積極性を評価してくれる企業は必ずある」とし、OB・OG訪問にばかりとらわれてはいけないと強調する。

各大学のOB・OG組織
大学卒業生組織会員数備考
慶応大学慶応連合三田会約37万人OB・OG同士の交流が
主目的。
東京大学東京大学校友会約20万人キャリアセンター主催の
模擬面接で、卒業生が協力。
一橋大学如水会約3万4千人現役の学生も加入する
ことで、OB・OGとの
つながりを強化。
早稲田大学早稲田大学校友会
(稲門会)
約60万人昨年から、OB・OGと
学生が交流する
就活イベントを開始。

OB・OGが後輩に協力するか否かは、大学のレベルによって違うだけでなく、卒業生の愛校心にも比例する。自分の出身大学に一喜一憂していてはキリがない。最近では、大学を横断するサークルも多数あり、そのつてで行きたい企業の社員を見つける学生もいる。加えて、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)なども発達し、一昔前に比べて社会人と接触する機会は確実に増えている。人材コンサルタントの常見陽平氏は、「手段を選ぶな。説明会など社会人と接触する様々な機会に目を配るべきだ」とアドバイスする。

(飯島圭太郎、雨宮百子、高尾泰朗、中山美里、松本千恵)

 「お悩み解決!就活探偵団」では読者の皆様からのご意見、ご感想を募集しております。こちらの投稿フォームからお寄せください。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

就活

新型コロナウイルス感染拡大がやまない中でも就職活動に励む学生、採用する側の企業は、ともにオンラインと対面を駆使しより良い出会いを求めます。就活に役立つニュースや、様々な疑問に答える『就活探偵団』などの読み物を掲載します。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン