原発の大規模稼働「今世紀限り」 ヤツコ元米原子力規制委員長 (3.11を胸に)
原発どこへ

2016/3/11 3:30
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福島原発事故の最も重要な教訓は、事故は今でも起こりうるということだ。福島事故前は、原発の事故は決して起きないと信じられていた。市民や産業界、政府は、事故は起こりうることを認めなければならない。

グレゴリー・ヤツコ(Gregory Jaczko)1999年米ウィスコンシン大院修了。米ジョージタウン大助教授などを経て、2005年に米原子力規制委員、09~12年委員長。ニューヨーク出身、45歳

グレゴリー・ヤツコ(Gregory Jaczko)1999年米ウィスコンシン大院修了。米ジョージタウン大助教授などを経て、2005年に米原子力規制委員、09~12年委員長。ニューヨーク出身、45歳

除染とは放射性物質に汚染されたものを取り除き、別の場所に移すことだ。どこをきれいにして、どこを汚すかということだ。汚染物質を住宅地から遠く離れた場所に移そうとしても日本のような人口密集国では適地が少ない。特効薬はない。

水の汚染は今も続いている。事故は進行中だ。燃料を冷却した水を回収して保管する大量のタンクがつくられたが、最も重要な分析がされていない。水を何年ためておくのか。数十年か、数百年か。不測の事態で何が起きるか、長期的に分析しなければならない。

米国は1979年、スリーマイル島原発事故を経験した。事故後、業界団体の米国原子力発電運転協会(INPO)ができ、緊急避難などの対応のために米連邦緊急事態管理局(FEMA)が創設された。原子炉の設計も大幅に変え、安全装置を追加し、中央制御室も再設計した。原子炉(の輸出)を通じ、変化は他国にも広がった。それでも福島で事故は起きた。

技術評価をしていないので言及しづらいが、新規制基準に適合していても、もう事故は起きないと保証はできない。これは伝えるべき重要なメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが伝わっている。

将来、原発が大規模に稼働しているとは思わない。原子力は非常に高価な技術で、来世紀には使われていないだろう。多くの電力を巨大発電所でつくり、離れた都市や工場などに送電するという仕組みは今世紀限りだ。小規模な天然ガス火力発電所や再生可能エネルギー、水力発電所などで地域の電力需要を満たすのが合理的だ。

多くの国で原発依存度は現状維持か減少傾向にある。米国では現在約100基ある原発の多くが15年以内に運転許可の期限を迎え、経済的圧力で運転延長はあまり申請されないだろう。原発は今後15~20年でエネルギー源としての終わりが始まると思う。

(ワシントン=川合智之)

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