MOLCURE 抗がん剤の開発支援、救えなかった父一念発起
「世界の多くの患者さんに、効果の高い薬をもっと安価に提供したい」。バイオ関連スタートアップのMOLCURE(モルキュア、東京・品川)の小川隆社長は意気込む。

開発したのは「Abtracer(アブトレーサー)」と呼ぶサービス。遺伝情報を高速で読み取る「次世代シーケンサー」と人工知能(AI)を組み合わせた。抗がん剤に不可欠な抗体をより多く短期間で見つけ出す。抗体医薬品は副作用が少なく関節リウマチ治療薬などとして期待される。
起業のきっかけは慶応義塾大学在学中に父親をがんで亡くしたことだ。当時、生命科学を学んでいたが、父親を救うことはできなかった。「がんを治す技術の実現には学界や産業界のあらゆるリソースを集める必要がある」と2013年に設立した。
同社の手法は独特で、周りからは当初「理論は面白いが、うまくいくわけがない」とみられていた。共同研究先と検証を繰り返し、優位性を示すデータがようやく得られた。「苦労と喜びは表裏一体。その瞬間、最大の喜びを感じた」と振り返る。