班目氏、原発事故「被害拡大させ反省」 元原子力安全委員長
再生への闘い(3)

2016/3/8 2:02
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5年前の東京電力福島第1原発事故が起きた当時、原子力安全委員長だった班目春樹氏は首相官邸などで、菅直人首相(当時)らの事故対応の助言役を務めた。事故当時の状況や、現在の原発を巡る安全規制の状況などについて聞いた。

元原子力安全委員長の班目春樹氏

元原子力安全委員長の班目春樹氏

――東日本大震災をどう振り返りますか

「あの日、東京・霞が関のオフィスで大きな揺れを感じた。直後は情報がほとんどなく、福島原発の状況もはっきり分からなかった。安全委の他のメンバーとほとんど対応を協議する機会もないまま、官邸に呼ばれて説明などに追われ続けた」

「翌日の12日午前、菅首相らとともに同原発を視察した。同日午後に1号機の建屋で水素爆発が起きて放射性物質が漏れ出した。核爆発は無いと思ったが、水素爆発のリスクを政府に説明できていなかった。緊急時ではあったが、一人での対応に限界があったと思う。結果として被害拡大を招くことになり、今も深く反省している」

――事故後、原発の見方は変わりましたか

「事故を経験したとはいえ、現実的に原発が無いと資源のない日本経済は回らない。リスクはあるが、必要悪だと今も思っている。電力会社は相当な金額を原発に投資しており、今やめてしまえば経営が持たない。ドイツのように電気料金が高くなっても良いなら別だが、日本では難しい」

――各地で再稼働の動きが広がってきました

「原子力規制委員会が策定した新しい規制基準をクリアした原発の再稼働を進めている。津波以外に火山や竜巻など様々な事態を想定しており、設備などハード面の安全性は大幅に向上した。だが、こうした規制がなぜ必要なのか国民に十分に説明できていない。本当にこの規制で安全なのかを専門家が改めて議論し、検証する必要がある」

「安全性をさらに向上する方策も検討するべきだ。欧州連合(EU)などが導入する耐性調査(ストレステスト)などを実施し、ソフト、ハード両面の対策を進める必要がある。5年前は安全委が緊急時に果たすべき役割があいまいだったという反省がある。規制委自身も緊急時対応の訓練を積むべきだろう」

 《略歴》まだらめ・はるき 72年東大院修了。東大教授などを経て、10年から原子力安全委員会委員長。福島第1原発事故後の対応などにあたり、12年に退任する。専門は原子力工学。67歳。
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