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核のごみ、決着へ道のり遠く 国主導で「科学的有望地」選定

再生への闘い(3)

東京電力福島第1原子力発電所事故からまもなく5年を迎えるなか、原発の再稼働が徐々に進み始めた。一方で再稼働すれば増える高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の問題はまだ見通しすら立っていない。昨年、国が主導する方針に改め、年内には建設地として適した「科学的有望地」を公表する。住民や自治体には警戒する声もあり、決着までには曲折が予想される。

「国民や地域に冷静に受け止められる環境を整えたうえで、科学的有望地の今年中の提示を目指す」。林幹雄経済産業相は今年の重要課題の1つとして核のごみの最終処分場の問題を挙げる。

核のごみは原発から出る使用済み核燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを回収した後に残る廃液だ。極めて強い放射線を出すため、ガラスと混ぜた「ガラス固化体」にし、地下300メートルよりも深い安定した地層に数万年以上にわたって処分する。現在は、再処理を委託したフランスや英国から返還されたガラス固化体が再処理工場を建設中の青森県六ケ所村に一時保管されている。

政府は昨年5月、最終処分に関する基本方針を7年ぶりに改定。全国規模で整備された入手可能な文献やデータに基づき、地質環境の特性や施設の安全性の観点から適性に応じて地域を3つに分類する科学的有望地をもとに、複数の自治体に調査への協力を申し入れることにした。

それまでは、2000年に設立された電力会社を中心とした事業主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)が自治体からの候補地選定調査の受け入れを待つ公募方式だった。07年には高知県東洋町が応募したものの、住民の反対で白紙撤回となり、これまで調査に着手できた例はない。

科学的有望地は火山や活断層の周辺など回避すべき範囲が1つでも該当すれば「適性の低い地域」に分類する。それ以外は「適性のある地域」に分ける。六ケ所村から処分場まで海上での輸送を想定するため、港湾からの距離が十分短い沿岸部は「より適性の高い地域」に整理している。

15年の基本方針の改定後、経済産業省とNUMOは住民や自治体向けに全国でシンポジウムや説明会を開き、科学的有望地の提示への理解を求めている。ただ、参加者からは「地震や火山が多い日本で本当に安全性が保てるのか」などの疑問の声があがる。経産省は「最終処分場は決して国が押しつけるものではない」とするが、警戒する向きは多い。

経産省は住民の心理的な負担が少ないとみられる沿岸部の海底下でも最終処分が可能か、有識者を集めて検討を始めた。海岸線から比較的近い10キロ~15キロメートルほど離れた海底の地下1000メートルに建設する際の安全評価など技術的な課題を今夏をめどに整理する予定だ。

核のごみの量は、ガラス固化体に換算すると約2万5000本分ある。100万キロワット級の原発を1年間稼働させると、ガラス固化体は約30本発生する計算だ。原発の再稼働でたまり続ける核のごみ。世界各国で処分場決定には長い時間を必要とするなか、日本でどこまで理解が進むか。議論が本格化するのはこれからだ。

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