2019年1月24日(木)

「左対左」は投手有利? 特殊性ゆえ要所で力発揮
ノンフィクション作家 小野俊哉

(1/2ページ)
2016/3/6 6:30
保存
共有
印刷
その他

試合の終盤、勝負の分かれ目。左の強打者を迎えたところで守備側の監督がベンチを出れば、年季の入ったファンでなくても次の展開は想像がつく。左投手の投入だ。目には目を、歯には歯を、毒には毒を、左には左を。「左対左は投手が有利」は球界で最も流布した常識の一つだ。今回はこれを検証してみよう。

試合の流れ決めた横手投げ左腕投入

最近、サウスポーの投入が明暗を分けた試合といえば昨年9月19日のセ・リーグ首位攻防戦、ヤクルト―巨人が挙げられる。5―4の七回、1点リードのヤクルトはサイドスロー左腕の久古健太郎をマウンドに送った。久古は阿部慎之助を一ゴロ、アンダーソンを二飛、亀井善行を遊直と左が並ぶ中軸を三者凡退に打ち取った。その後に味方打線が爆発し、終わってみれば10―4の大勝。ヤクルトは優勝に前進した。勝利投手ではなかったが、久古の好投が試合の流れを決めた。

ヤクルト・久古は昨年の日本シリーズで左打者を完璧に抑えた=共同

ヤクルト・久古は昨年の日本シリーズで左打者を完璧に抑えた=共同

ソフトバンクとの日本シリーズでも久古は力を発揮した。3試合に登板し、主砲の柳田悠岐から2三振を奪うなど左打者に対して6打数無安打4奪三振。レギュラーシーズンではリーグ屈指の強打者に成長したDeNAの筒香嘉智を5打数無安打に封じている。

左打者にぶつけられる"刺客"の系譜は長い。古くは大洋などで活躍した平岡一郎。王貞治に対する切り札として名将・三原脩監督に重用された。1970年には日本シリーズの巨人対策として濃人渉監督率いるロッテに1年だけ移籍した。日本シリーズに出られるかどうかも分からないのにロッテも変わったことをするなと思ったものだが、本当に巨人とシリーズで対戦し、しかも平岡が活躍した。濃人監督の先見性には驚いたものだ。

その後も70~80年代の永射保(西武など)、80~90年代の清川栄治(広島など)、「松井(秀喜)キラー」として名をはせた遠山奨志(阪神など)らが記憶に残る活躍をした。近ごろマスコミに登場している野村貴仁もこのリストに連なる一人。オリックス時代の96年、巨人との日本シリーズで若き主砲の松井を手玉に取った。精悍(せいかん)だった往時から変わり果てた今の姿には驚くばかりだが……。

西武・高橋朋は昨季、左打者に対して被打率1割3分8厘だった=共同

西武・高橋朋は昨季、左打者に対して被打率1割3分8厘だった=共同

左対左と右対左に歴然とした差なし

現在の球界で左打者を抑え込んでいるリリーフ左腕は誰なのか。昨年の成績を調べてみた。セで最も多くの左打者(両打ちは除く)と対戦したのは中日の岡田俊哉。103人と対戦し被打率2割2厘は高く評価できる。20人以上の打者と対戦した左投手で被打率を2割未満に抑えたのはセ・パ合わせて8人いる。

セでは広島の戸田隆矢(1割6分4厘)に飯田哲矢(1割7分2厘)、DeNAの福地元春(1割8分2厘)に大原慎司(1割8分3厘)、巨人の高木京介(1割8分3厘)だ。パでは西武の高橋朋己(1割3分8厘)、日本ハムの宮西尚生(1割6分2厘)、楽天の松井裕樹(1割8分2厘)の3人である。なかでも松井は99打数で42奪三振という迫力。あえて最大公約数的な共通点を探せば、スライダーなど逃げる球の切れが良いこと、胸元に投げきれる制球力があること、勝負どころでも動じないずぶとさがあることなどが挙げられそうだ。

左対左で投手が有利な理由は「打者の背中側から来る球筋が見にくく、体が開きやすいため」というのが一般的な説明だ。だが、それが普遍的な法則なのかというと、そうとばかりもいいきれない。

  • 1
  • 2
  • 次へ

日経電子版が2月末まで無料!いつでもキャンセルOK!
お申し込みは1/31まで

保存
共有
印刷
その他

プロ野球コラム

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報