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健闘サンウルブズに見たラグビー日本代表の「遺産」

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2016/3/4 6:30
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出足はまずまず、といえる。南半球最高峰リーグのスーパーラグビー(SR)に参戦した日本チームのサンウルブズは、2月27日の初戦で13-26と健闘した。練習日数や選手の経験値では参加18チーム中、最低レベル。大敗もあり得るとの下馬評が聞こえていたが、スコアだけでなく試合の中身にも見どころがあった。悪条件にもかかわらず、まずは無難に船出できた要因を考えると、昨年のワールドカップ(W杯)を戦った日本代表の「遺産」を感じさせる。

「低さ」で昨季8位の相手と渡りあう

何しろ厳しい状況だった。サンウルブズで過去にSRの試合を経験している選手は6人しかいない。開幕前の練習期間も、2~3カ月はとった他チームの半分にも満たない、たった3週間。「短い準備期間にしてはよくやれた」。37歳でSRデビューを果たした大野均と同様の言葉を多くの選手が口にした。

ライオンズ戦の前半、太もも周辺に突き刺さるタックルで相手選手の攻撃を阻む山田=共同

ライオンズ戦の前半、太もも周辺に突き刺さるタックルで相手選手の攻撃を阻む山田=共同

昨季8位の南アフリカの中堅クラブ、ライオンズを向こうに回し、十分に渡りあえた原因の一つは「低さ」にある。サンウルブズの選手は相手の太もも周辺に突き刺さるタックルを連発した。相手の落球を誘発、もしくはランナーをきれいに倒し、直後の密集戦でボール奪取に成功した。「低いタックルで何度もボールを奪うことができた。守備は機能していた」とマーク・ハメット・ヘッドコーチ(HC)も胸を張る。

攻撃時にも、その特長は生きた。ボールを持った選手が、タックルに来る相手の目前で膝と腰を折り曲げ、低い姿勢で突進する。かいな力を生かしてボールに絡もうとする巨漢選手の下に潜り込むことで、何度も前進できた。個々の肉弾戦で圧倒されるのではという懸念は取り越し苦労に終わった。

おかげで、日本代表よりもオーソドックスな形にした攻撃布陣も機能。後半18分、主将の堀江翔太が決めたチーム第1号トライのように、新参チームと思えないほどテンポのいい連続攻撃もできた。「アタックはうまいこといっている」と堀江も手応えありだ。

後半、チーム初トライを決める堀江=共同

後半、チーム初トライを決める堀江=共同

この日ピッチに立ったサンウルブズの21選手の中で、昨年の日本代表合宿に参加したのは11人だけ。しかし、外国人を含めた他の選手にも、チームの「色」を意識する姿勢は見て取れた。特に顕著だったのが、オーストラリア人のエドワード・カークら外国人3人で組むFW第3列。密集戦で相手のボールに絡みついてピンチを防ぎ、マイボールを確保できたのはこのトリオの奮闘が大きい。全体練習が終わった後、低い姿勢で密集に入る動きを居残りで繰り返す、勤勉な姿勢が生きたのだろう。

この舞台で戦えば「より成長できる」

「低さ」を忘れたときには、痛手も被った。ボールを持った選手が相手にぶつかる際に「ところどころで抱え上げられるところがあった」と堀江。体格ではライオンズに引けを取らない選手でも、上半身が浮いたまま当たるとすぐに数人に包囲され、相手ボールにされた。国内では大禍に至らない僅かな甘さが、この舞台では命取りとなる。昨年のW杯で日本が3勝を挙げた試合のように80分間、15人が低さを徹底することが今後も試合の行方を左右するのだろう。

もちろん、準備不足によるチームの隙もまだ目立つ。前半に反則を連発したスクラムや、組織守備での意思疎通などは、SRの平均レベルに達していない。

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