2019年2月23日(土)

独サッカーでヘルタ躍進 粘りの監督、独特の存在感
スポーツライター 木崎伸也

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2016/3/2 6:30
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目を引く戦術があるわけではない。世界的なスターもいない。だが39歳のパル・ダルダイ監督率いるヘルタ・ベルリンは、サッカーのドイツ1部リーグで3位(2月29日現在)につけている。

今年1月のウインターブレーク明けからは5試合勝利がなかったものの、それでも4分け1敗としぶとく勝ち点を積み重ね、6試合目のケルン戦(2月26日)で勝利をあげた。ドイツ杯でも準決勝に勝ち上がっており、4月20日にドルトムントに勝利すれば、地元ベルリンで開催される決勝に進出できる。もはやヘルタの躍進は偶然とはいえない。

やることがシンプル、戦術に柔軟さ

昨年2月、ダルダイ監督が就任したとき、ヘルタは17位に沈んでいたのだ。このハンガリー人監督は、どうやってチームを生まれ変わらせたのだろう? 今回は3つのポイントに注目したい。

1つ目は「戦術の柔軟さ」だ。

日本代表の原口元気は、ダルダイ監督の下でレギュラーの座をつかみ、躍進に貢献している一人だ。ヘルタの練習場で質問すると、原口は好調の要因をこう答えた。

「攻撃も守備もある程度決まっているというか、やることがシンプルなので、それをうまく表現できているかなと思う。つなぐときはつなぐし、守るときは守って1対0で勝つ力がある。ひと言で言えば、相手によって攻め方も守り方も変えるということ。すごく相手を分析していて、具体的な指示を出してくれる監督です」

相手によってやり方を変える――。戦術的なフレキシビリティーはダルダイ監督の特徴の一つだ。

前半の途中でヘルタが先制したとしよう。すると監督は、後半からガラリとやり方を変えて守備を固め、自分たちがボールを持ってものらりくらりと後方でパスを回して時計の針が進むのを待つ。決してエキサイティングな展開にはならないが、終了のホイッスルが鳴ったときに歓喜を味わうのはダルダイのチームだ。

「監督が『今から守るぞ』とは言わないが、意図的にそういう交代をするので、今から守るんだなとわかる」

スカウティングの力で正しい戦術選択

そういう戦術の柔軟さを支えているのが、優れたスカウティング能力だ。たとえば16節のダルムシュタット戦では、「相手はロングボールを放り込み、偶然に頼るサッカーをする」と分析。意図的に混乱状態をつくって、フィジカル勝負に持ち込むやり方である。

これに対してダルダイ監督が用意したのは「あえて前線から激しくプレスをかける」という戦術だった。いつもならば低い位置に構えてカウンターを狙うところを、トップ下に守備的MFのダリダを起用してガツガツ前から圧力をかけたのである。ヘルタは完全に試合を支配し、4―0で勝利することができた。

ダルダイ監督は独ターゲスシュピーゲル紙のインタビューでこう説明した。「試合までの1週間、コーチたちと徹底的に相手を分析し、どんな戦術を採用するかを考えるんだ。ダルムシュタット戦では試合前日に敵地に移動するまで決まらなかったが、ついに夜に策を思いついた。正しい戦術を選ぶことがものすごく大事だ」

ダルダイはヘルタで14年間プレーしたレジェンドだが、指導者としてはヘルタU―15(15歳以下)の監督にすぎなかった。2014年に突然ハンガリー代表監督を任されたが、あくまで暫定監督だ。トップリーグの指導経験はゼロだったのである。

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