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憧れの舞台・F1は目前 ドライバー・松下信治(上)

幼い頃、鈴鹿サーキットを疾走するマシンにみせられた。赤い跳ね馬、フェラーリを操るミヒャエル・シューマッハー(ドイツ)はヒーローだった。モータースポーツの頂点F1。松下信治(22、ARTグランプリ)は今、その憧れの舞台が手に届くところにいる。今年は勝負の年。「GP2でチャンピオンを狙いたい」と静かに闘志を燃やす。

若武者、日本人2人目のGP2優勝

シーズン当初はホンダのF1復帰に沸いた昨季のモータースポーツ界。現実は厳しかった。2人の世界王者を擁しながら、表彰台はおろかポイント獲得もままならない。沈滞ムードさえ漂っていたシーズン半ば、22歳の若武者が快挙を成し遂げた。F1に次ぐカテゴリー、GP2での優勝だ。

7月、F1ハンガリーグランプリ(GP)のサポートレースとして行われた第6戦のレース2。ポールポジションから松下は好スタート。チームメートで昨季のGP2王者となったストフェル・バンドーン(ベルギー)の追撃を抑え、そのままチェッカーを受けた。日本人ドライバーとしては2008年の小林可夢偉以来2人目の勝利に「手応えを感じ、自信になった」。

GP2とは、各国の優秀な若手ドライバーがF1へのステップアップを目指して競う舞台だ。昨季3度目のF1王者に輝いたルイス・ハミルトン(メルセデス、英国)、その同僚ニコ・ロズベルグ(ドイツ)ら数多くの選手がこのタイトルを獲得し、F1への階段を駆け上がっている。

松下は14年に全日本F3を制し、GP2に挑戦することになった。ただ、1年目は戸惑いが大きかった。マシンは4リッターV8エンジンで約650馬力。パワーはあるが体力的な負担も大きく、扱いにくい。初めて乗った時は「タイヤも含めて本当に難しかった」。

「今年は常に表彰台を狙っていく」

海外で過ごすシーズンも、走るコースもすべてが初体験。しかも、GP2のフリー走行は1回45分だけ。その限られた時間の中で、適切なコース取りやマシンのセッティングを煮詰めていく。さらに予選では異なるタイヤをはいて、2~3秒速いタイムでのタイムアタックをしなければならない。

「予選は(フリー走行とは)違うブレーキングポイントが求められる。これぐらいでいけるかな、っていう直感だけを頼りにしたところもあった」。新人にとっては小さくないハンディ。だが、不利な条件を克服して結果を出さないと生き残れない。

その中でやれることはやったという気持ちはある。昨季は全11戦21レース中ハンガリーでの優勝1回をはじめ、2位1回、3位1回でシリーズ総合9位。「未知の領域が多い中で、取れるポイントは取れたかな」

もちろん目指すものははるか上にある。満足はしていられない。「チャンピオンを100点満点とすれば、去年は30点から40点くらい。今年は常に表彰台を狙っていきたい。F1を目指すにはここで勝たなければ」と表情を引き締める。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊2月29日掲載〕

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