ザクザク感が人気、シュークリームは「皮」が熱い

日本人に昔からなじみがあり、現在でも大手コンビニの洋生菓子では平均して売り上げトップを占めているシュークリーム。そのシュークリームに今、新たなトレンドが起こりつつある。従来からあるクリーム重視の流れに対し、焼きたての皮の食感を重視した商品が次々に登場し、人気を集めているのだ。
"皮を味わうシュークリーム"ブームのきっかけと見られているのが、2014年9月、ルミネエスト新宿地下1階にオープンした「クロッカンシュー ザクザク」。運営しているのは、行列店として有名な焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を展開しているBAKE(東京都目黒区)だ。ザクザクとした食感で香ばしい焼きたての皮と濃厚なクリームが人気を呼び、1日に最高4000本、月間9万本も売れているヒット商品。2015年5月には原宿に旗艦店、同年9月には蒲田店をオープンし、3店の累計で約220万本も売れているという。
もともとは、札幌の洋菓子店「きのとや」で2010年に発売され、人気を集めていた商品。当時の社長である長沼昭夫氏の「通常のシュークリームは皮がおいしくない。シュー皮がおいしいものはできないか」という要望から完成したという。札幌ではクリームを詰めたものを冷蔵で販売するスタイルだったが、東京進出にあたり、特色である食感をよりはっきりと味わってもらいたいと考え、工房一体型の専門店を作ったという。
「"北海道で大人気の新食感シュークリームが東京初上陸"というキャッチと同時に、『ザクザク』という商品名も分かりやすかったと思う。"ハードな食感"という意外性を打ち出したことや、"できたて"に特化したことで、味の面でも評価を得られたのでは」(BAKE プロデューサー 阿座上陽平氏)。




大手チェーンにも皮に注目した動きがある。シュークリームチェーン「ビアードパパ」を運営する麦の穂(大阪市)は、新業態「CHOUXCREAM CHOUXCRI(シュクリムシュクリ)」を2015年3月にオープンした。「今までと違うシュークリームを作りたいと考えたときに、これから求められるおいしさは食感にあると考え、皮に特徴のあるシュークリームを開発した」(同社)という。


クリームなしで皮だけを味わう伝統菓子
さらに、クリームを入れず、ピンポン玉大のシュー皮そのものを味わうフランスの伝統的焼き菓子「シューケット」の専門店も登場。2015年12月5日にオープンした「シューケットTOKYO」がそれだ。パリでは、2015年に有名シェフがユニークなシューケット専門店をプロデュースし、新感覚のシューとして流行の兆しを見せているという。
シューケットTOKYOでは、焼きたてのシューケットに生クリームと甘いソースを絡めて食べる3種の「シューケット・スクレ」と、チーズ風味で塩味の「シューケット・サレ」の2タイプを提案している。フレンチの巨匠、アラン・デュカス氏のもとで長年にわたり腕をふるい、5つ星ホテルで日本人女性初のシェフ・パティシエールを務めた千葉ともみ氏が監修。週末は行列ができるほどの人気で、1箱10個入りのテイクアウト用ボックスを一度に3~4箱購入する人も珍しくないそうだ。




クリームなしシュークリームがおつまみに
また、「ニコラハウス」(東京・表参道)は2015年からシューケットを使ったオリジナルサンドイッチ「シューサレドイッチ」の販売を開始した。フランスパンを使用したサンドイッチに比べると軟らかくて食べやすいうえ、中が空洞なのでカロリーが低いことから、若い女性に人気。「具と同じくらい風味豊かなシュー皮も楽しんでいただきたいので、作り置きはしないで毎日仕込んでいる」(ニコラハウスのシェフで料理研究家のニコラシャール氏)とのこと。
両店のシューケットを味わってみたが、ひとくちサイズだとかんだときに外側のカリカリ感、内側のしっとり感を同時に味わえる。シューの新しいおいしさを発見した思いだった。また塩味のシューケットは、焼き立ての香ばしい風味に驚いた。ワインやビールとの相性も抜群なので、花見のシーズンの新しいおつまみとしてもブレイクするかもしれない。




(日経トレンディネット 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2016年2月2日付の記事を再構成]
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