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小悪党と巨額にアンバランス感 FIFA汚職の背景
スポーツ総合研究所所長 広瀬一郎

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2016/2/29 6:30
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国際サッカー連盟(FIFA)の新しい会長が決まった。ゼップ・ブラッター前会長時代のウミをどう取り除くのか、今後の動向が注目される。

FIFA理事たちの贈収賄については、既報の通り。その地位を利用して、不正に巨額のお金を着服していた。この事件の特異なところは、直接的な被害者がいないことだ。だから糾弾されたジャック・ワーナー元副会長をはじめ、誰も暗さがない。私は昨年、事件が明るみになった際、いくつかのメディアの取材を受け、「陽気な田舎の小悪党たち」と評した。着服した金額は確かに巨額なのだが、当人たちは大それた悪事を働く悪党ではない。巨額な不正の結果と小悪党どもに、大きなアンバランス感を持たざるを得ない。

その差は何から生じたのか。それを探ってみたいと思う。なぜなら、その差がこの事件の本質であり、本質を理解しなければ、根本的な解決は望めないからだ。

「あぶく銭」生んだW杯の放送権入札

問題の解決には、原因を取り除くことが必要だ。理事たちの着服は原因ではなく、結果だ。原因は「カネ余り」であり、それは「不相応な収入金額」にある。この原因を取り除くために必要なのは、横領に厳罰を処する規定を設けることなどではない。端的にいって、「入ってくるカネの使い道」をどうするか?なのである。

企業経営であれば、当然「短期的」と「長期的」な投資の比率、それは「投資」と「内部留保」の比率、つまりポートフォリオの問題となる。これは、まさに「組織の戦略」の問題なのだ。「収入が不相応」なのは、「値段が高過ぎる」という意味ではない。ソフトの価値は純粋に市場の需給関係で決まる。需要が大きければ高い。仕入れ原価と売り上げに論理的な整合性はない。「相応かどうか」は、ポートフォリオで判断されるべきなのだ。これが戦略の内実だからだ。戦略の無い者には、どんな収入も不相応なのだ。

翻って、今回の会長選挙の立候補者で誰がこのポートフォリオを明らかにしただろうか? ジョアン・アベランジェ元会長が就任したころは、「収入の拡大」と「財務の安定」が戦略の中心課題だった。安定が確保されたら、次の戦略は「投資」になるのは当たり前であり、常識なのだ(あぶく銭を贅沢=ぜいたく=三昧で蕩尽=とうじん=するのは小者のなせること、という認識は古今東西の常識だろう)。

その「あぶく銭」となる巨額なお金がFIFAに流れ込むことになったのは、1996年の7月に、FIFAワールドカップ(W杯)史上初めて、テレビの放送権の入札が行われたことが契機だった。98年のフランス大会では全世界の放送権料は約200億円だったが、入札により一挙に1150億円に値上がりしたのだ(決まり値はスイスフランで、2002年と06年の2大会の合計額が約2300億円)。仕入れ値が同じだから、利益額が1大会あたりで950億円増えたことになる。

UEFAが求めたマーケティング改革

そもそも入札も当時のFIFAのアベランジェ/ブラッター政権が意図したことではない(これも「あぶく銭」となる原因だ)。入札の2カ月前に日韓共同開催が決まっていたが、02年の開催地決定を日韓が激しく争い、アベランジェ政権と欧州連盟の代理戦争の様相を帯び、「共同開催」という決定は、その妥協の産物だった。

アベランジェ氏は74年の会長就任からの長期政権だったが、94年の米国大会直前に心臓病を悪化させ、大会後に退陣すると思われていた。本人がそれを示唆するコメントを出してもいた。ところが手術が成功し、健康を回復すると、02年のアジア開催に引き続き、06年大会のアフリカ開催の可能性について言及したのである。02年の日本開催をアベランジェ会長退陣の花道と理解していた欧州サッカー連盟(UEFA)は、「06年大会が決まる00年まで会長職を降りないのか!」と激怒。それから明確な「反アベランジェ」の旗を掲げ、日本の単独開催を潰しにかかったのだ。

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