格安SIMへの乗り換え、覚えておきたい基本手順

ステップ1 MNPの予約番号を取得する
MNP制度を使って格安SIMに乗り換えるには、「MNP予約番号の取得」「転入の申し込み」「電話番号の移し替え」「端末の設定」という4つのステップが存在する。最初のステップは、MNP予約番号の取得だ。
MNP予約番号とは、解約したい通信会社にMNP制度を利用した転出を申告した際に発行される、10桁の番号のことだ。この番号を乗り換えたい通信会社に伝えると、転出元の通信会社で利用していた電話番号を移し替えることができる。
今回の場合、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクといった大手の通信会社から予約番号を取得することになる。予約番号は、各通信会社のショップ店頭、サポートサイト、電話窓口で発行を受け付けている。

予約番号の取得時には、「MNP制度の転出手数料が掛かる」「転出後はキャリアメールが使えなくなる」「長期契約の更新月以外では契約解除料が生じる」といった、転出に伴う注意事項の説明を受ける。一旦格安SIMに乗り換えると大手の通信会社は解約することになるので、この段階でしっかりと内容を確認しておきたい。
なお、予約番号の取得については幾つか注意点がある。
まず、MNP制度を利用するには、転入先の通信会社に予約番号を伝える必要があるということ。予約番号がわからないと格安SIMに電話番号を移し替えられないので、忘れないように予約番号を控えておこう。オンラインで取得した場合は、予約番号が表示されたページを印刷するのも手だ。
また、MNP予約番号には発行日を含む15日間という有効期間がある。期間内に転入の手続きを行わなかった場合は予約番号が失効し、その予約番号では転入手続きが行えなくなるので注意したい。なお、予約番号の発行には料金がかからないので、失効してもMNP予約番号を再度取得すればよい。
ステップ2 MNPの転入を申し込む
次のステップは、格安SIMの通信会社へMNP制度を利用した転入の申し込みだ。格安SIMの通信会社はオンラインで新規契約やMNPの転入を受け付けているが、なかには直営店や家電量販店の店頭などで転入できるケースもある。ここではオンラインと店頭、それぞれのパターンごとにチェックしていこう。
オンラインで申し込む場合
オンラインでMNPの転入を申し込む場合には、各通信会社の申し込みページを開き、ステップ1で取得したMNP予約番号と移し替えたい電話番号の他に、契約者の氏名、住所、連絡先、支払いに用いるクレジットカード情報、契約したい料金プランといった、契約に必要な情報を入力・選択していく。

また、音声通話対応SIMカードの申し込みには、身分証明書の提出も必要だ。オンラインで申し込む場合には、スキャナーで取り込んだり、デジタルカメラやスマホなどで撮影したりした書類の画像データをアップロードすることになる。身分証明書になる書類は通信会社によって指定されているが、運転免許証、健康保険の被保険者証、パスポートなどを利用できる。
すべての情報を登録して手続きが完了すると、連絡先に指定したメールアドレスへ申し込みを受理した旨のメールが届き、通信会社内で申し込みの処理が進む。あとは、登録した住所にSIMカードが到着するのを待つだけだ。
なお、転入の際はMNP予約番号の有効期限がある程度残っていなければならない。これは、転入手続き中に予約番号が失効してしまうのを避けるためだ。通信会社によって残り日数の指定は異なるが、UQ mobileのように「取得日から2日以内」としている場合もある。予約番号を取得したら、その日のうちに申し込むのが確実だ。
店頭で申し込む場合
店頭で格安SIMへの転入を申し込む場合には、身分証明書、MNP予約番号の控え、支払いに用いるクレジットカードなどを持参する。転入する旨を店頭のスタッフに告げれば、あとは案内に従って書類の必要事項を記入したり、暗証番号を指定したりすればいい。
また、MNPの転入に即日対応している店舗なら、その場でSIMカードを受け取れるのもメリットの一つだ。次のステップ3で説明する電話番号の移し替えも店頭で完了するので、ステップ4に直接進むことができる。
ステップ3 格安SIMに電話番号を移し替える
次のステップは、電話番号の移し替えだ。
利用者の契約情報と端末を結びつけるSIMカードは、通信会社ごとに発行される。そのため、通信会社が変わったら、SIMカードを交換しなければならない。
MNP制度を利用すると契約する通信会社が変わるので、やはりSIMカードを交換することになる。ただ、MNP制度では電話番号が引き継がれるため、転出元の通信会社から転入先の通信会社に電話番号を移し替える作業も必要だ。電話番号の移し替え作業には、通信会社によって2つのパターンがある。

自分で電話番号を移し替える場合
1つは、利用者が自分で電話番号を移し替えるパターンだ。
ステップ2で転入の申し込みを終え、通信会社で契約に関わる処理が完了すると、登録した住所にSIMカードが送られてくる。このSIMカードには、まだ電話番号が登録されていないので、そのままではスマホにセットしても使えない。
この場合、SIMカードが届いたら、利用者自身で電話番号の移し替え作業を行う。通信会社ごとにウェブサイトあるいは電話窓口を用いた手順が案内されているので、手順通りに作業を進めればいい。
作業が完了すると、短い場合で数分から数十分、遅くとも翌日中には格安SIMのSIMカードに電話番号が移り、転出元の通信会社のSIMカードは使えなくなる。端末のSIMカードを交換すれば、このステップでの作業は完了だ。OCN モバイル ONE、IIJmio、mineo、DMM mobileといった多くの通信会社が、利用者による電話番号の移し替えに対応している。
なお、SIMカードが届いても電話番号の移し替え作業をしなかった場合、MNP予約番号の有効期間最終日やその前日などに、通信会社によって強制的に電話番号の移し替えが実行される。SIMカードが届いたら早めに移し替え作業をして、SIMカードを交換しておこう。
通信会社が電話番号を移し替える場合
もう1つは、通信会社が電話番号を移し替えるパターンだ。
このパターンでは、転入の申し込み後に契約処理が完了すると、電話番号の移し替えが行われてからSIMカードが発送される。利用者は転出元の通信会社のSIMカードを端末から抜き取り、届いた格安SIMのSIMカードと差し替えるだけでいい。
先のパターンに比べて作業量は少ないが、転出元のSIMカードが使えなくなってから格安SIMのSIMカードが到着するまで、タイムラグが生じる。早くても1~2日、遅い場合は1週間近く、電話もデータ通信も使えなくなってしまうのだ。
利用者による電話番号の移し替えに対応する通信会社も増えつつあるが、楽天モバイル(店舗ではなくオンラインで申し込んだ場合)、So-net、DTIといった通信会社では、SIMカードの発送前に電話番号が移し替えられる。
乗り換えたい格安SIMでは電話番号を自分で移せるのか、それとも通信会社が移し替えるのかは、契約前に確かめておきたい。
ステップ4 端末にデータ通信の設定を行う
最後のステップは、格安SIMで通信を行うための設定だ。端末でデータ通信を行うには、通信会社ごとに固有の接続情報を登録する必要がある。このステップは、Android(アンドロイド)端末とiPhone・iPadなどのApple製端末で手順が異なる。
Android端末の場合
Android端末では、利用者が手動で接続情報を登録する。格安SIMの接続情報は、各通信会社のウェブサイトやSIMカードのパッケージに記載されている。

接続情報は、Android端末の設定アプリを開き、「モバイルネットワーク」の項目にある「アクセスポイント名」(APN)の画面で登録する。

「名前」「APN」「ユーザー名」「パスワード」「認証タイプ」の5つの項目を入力したら、接続情報を保存。APNの画面でいま保存した接続情報を選択すれば、設定は完了だ。入力するアルファベットを1文字間違えただけでも接続できないので、落ち着いて慎重に入力しよう。
なお、好きな通信会社で利用できるSIMフリー端末では、主な格安SIMの接続情報があらかじめ登録されていることが多い。この場合、APNの画面から契約した格安SIMの接続情報を選択するだけで、設定が完了する。
Apple製端末の場合
iPhoneやiPadなどのApple製端末の場合は、格安SIMの接続情報が記録された「構成プロファイル」と呼ばれるファイルを端末にインストールする。構成プロファイルは各通信会社のウェブサイトで配布されている。

インストール操作を行うだけなので、設定はAndroid端末より手軽だ。ただ、構成プロファイルをインストールするまで格安SIMではデータ通信が利用できないため、ダウンロードするにはWi-Fi経由でインターネットに接続できる環境が必須だ。

自宅にWi-Fiがない場合は、公衆無線LANサービスや職場のWi-Fiなどの代替手段が必要だ。Apple製端末で格安SIMを使いたい人は、Wi-Fiが利用できる環境かどうかも確認しておこう。
本連載の最終回となる次回は、一歩踏み込んだ格安SIMの活用法を紹介する。
(ライター 松村武宏)
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