2017年11月24日(金)

ウエアラブル「使ったことある」は5%
軽さや画像精度、端末開発様々

2016/2/28 3:30
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 眼鏡や腕時計の形で身につけて情報を送受信するウエアラブル端末を使ったことがある人はどれくらいいるか。クロス・マーケティングを通じて全国の男女1000人に尋ねると、使ったことがある人は5%にとどまった。若い世代ほど使ったことがある人が多く、20代では10%だが、まだ少ない。企業向けと個人向けのどちらから先に広まると思うか尋ねると「企業向け」が45%。「個人向け」(27%)と「同じくらい」(28%)より多かった。

 企業でどのように役立つと思うかは、複数回答で「マニュアルや手順を見ながら作業できる」が26%と最多。ついで「働く人の体温などを把握し体調管理」(22%)、「1人の指導者が離れた場所の複数の後輩や新人を指導できる」(21%)が多かった。

頭に着ける端末で店舗用冷凍・冷蔵ケースの組み立てを指示(群馬県大泉町のパナソニック群馬大泉工場)

頭に着ける端末で店舗用冷凍・冷蔵ケースの組み立てを指示(群馬県大泉町のパナソニック群馬大泉工場)

 パナソニック群馬大泉工場(群馬県大泉町)では、作業に慣れない人が頭に着ける小型画面のウエアラブル端末を、それ以外の人は音声が聞こえる小型スピーカーのような端末を身につけて作業する。「モーター」「ハーネス」など、次に取り付ける部品の名前を女性の声が予告。続いて男性の声で同じ部品名が聞こえると取り付けを始める。小型画面に部品の写真が現れる。各部品の取り付けに必要な標準作業時間も画面上に現れ、自分の作業が遅れているかどうか確認しながら進める。

 ウエアラブル端末を使うのは、一種類の製品を数台から10台程度と少量、かつ多くの種類を組み立てる生産ラインだ。1つの製品に50個前後の部品を平均15分弱で取り付ける。作業が複雑で製品の種類が多いため、ベテランでも5~6台組み立てるまでは標準的な作業時間でできなかったが、ウエアラブル端末導入後は最初の1台から標準時間内で組み立てられるようになった。

 頭に着ける端末はブラザー工業の製品だ。画像や動画を映し出す画面としての機能に特化したのが特徴。同社E&I事業推進部長の杉本吉市さんは「機能を絞ったことで軽くでき、画面の位置を自由に動かせるようにした。片目だけで見るので、実際に手元で行う作業の邪魔にならない」と話す。これまでに約100社が導入や実証実験で取り入れた。

 同じ眼鏡型端末でも、どんな機能に重点を置いて開発するかは各社で違う。セイコーエプソンは両目のグラスに画像を映し出す。画像の精度を高めたほか、動きが激しい現場で使われることを想定して、頭に安定して着けられるヘッドセット型で、防じん・防水性能も持たせた。電子機器開発を手掛けるベンチャー企業、テレパシージャパン(東京・中央)は、明るい屋外でも眼鏡のグラスに映った画像をはっきり見られるようにしたほか、35グラムという軽さながら着けた人が見た光景を撮影できるカメラ機能も備えている。

 各社の端末を活用したシステム開発も進んでいる。NECは眼鏡型と腕時計型の端末を組み合わせ、着けた人の腕に仮想のキーボードを映し出して入力できるようにしたほか、目の前にある機械を端末のカメラが認識して作業手順の画像を自動で映し出す機能を開発。NTTデータは手を使わず頭の動きだけで着用者が入力可能にした。構造計画研究所はあらかじめ工場の建物内などの写真を撮影しておけば、スマートフォンにもともと搭載しているセンサー機能と連携させ、眼鏡型端末のグラスに「この道順でこちらに行くように」といった指示を矢印で映し出せるようにした。

経験がないとわからない作物の異常を眼鏡型の端末で教えてもらうことも(佐賀市の佐賀県農業試験研究センター)

経験がないとわからない作物の異常を眼鏡型の端末で教えてもらうことも(佐賀市の佐賀県農業試験研究センター)

 ウエアラブル端末は、農業でも注目されている。佐賀県農業試験研究センターは、県と佐賀大とソフト開発会社のオプティムとの連携事業で、テレパシージャパンの端末を農業の作業効率化や技術指導の支援に使えないか実験中だ。農業機械の使い方を遠隔地から指導したり、作物が病気かどうか離れた場所のベテランが判断したりする可能性を探っている。技術が高い作業者にウエアラブル端末を着けて作業してもらい、技術を映像情報で保存することも検討中だ。「農業従事者の平均年齢が60代後半になる中、毎年新たに農業を目指して入ってくる人や大規模農家に雇われた人への技術伝承が課題。まず多くの人を雇う農業法人で役立つのでは」と、情報システム研究担当の権藤謙二係長は話す。

 ただ「まだ実用化には課題がある」(権藤さん)。機械を使った作業などでは振動で端末に映った画像がぶれて見えづらいほか、汗で眼鏡がずれたり、温室と外との気温差でグラスが曇ったりする問題が見つかった。

 工場など企業の現場でも、溶鉱炉の近くでは熱の影響で正常に端末が動作しなかったり、眼鏡のグラスの映像と実際の光景とを重ねて見ることで車酔いのような症状が出たりするといった問題が見えてきている。「可能性は大きいが、大きさや機能など、まだ改善する余地はある」と、テレパシージャパンの鈴木健一社長は言う。

 大和総研主任研究員の町井克至さんは、「ウエアラブルをただ持つだけでなく、端末で情報を収集し、それをどう活用するかが生産性向上のカギになる」と話している。

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